パワフルプロ野球といえば、言わずと知れた野球ゲームシリーズで、1994年の第1作発売から今年で30周年を数える有名シリーズである。野球ゲームに興味がなくても名前くらい聞いたことがあるという人も多いはずである。私も名前だけを知っていたたちで、初めてプレイしたのは2016とかなり後発だ。押しも押されもせぬ有名シリーズであり、野球ゲームとしてはトップであるといえるだろう。実際、シリーズ累計では最も売れた野球ゲームシリーズとして有名らしい。
2024年7月18日に発売された最新作の2024-2025年なのだが、やってみてあまりいい感触がしない……。発売直後はバグが多かったりしてプレイアブルでなかったということらしいのだが、現在はおおよそ修整されてそう気にもならないレベルになっています。
ところがこれが一番の問題なんですが、最強のやりこみモード
パワフェスが死んでしまったんですよ!!
パワフルフェスティバル
パワフェスというモードを簡単に説明すると、今までのパワプロに登場したチームが勢ぞろいの中から相手を選び対戦を行ない、勝利するとキャラクターを自チームに引き抜くことができるゲームです。好きなキャラクターを引き抜いたり、各チームのエースを集めたりしてチームを作り上げ、最終戦として作品ごとに登場するラスボスと戦う……というのがキモとなります。過去作のキャラクターがたくさん出てくるモード、というと古参ファン向けと思われ(私も新参なのでそう思っていました)、まず
かなりとっつきにくいです。二次創作かなんかで部分的に何人か知ってるキャラがいたとして、そのキャラが所属しているチームとかキャラの性能とかまではしらないじゃないですか。

橘みずきは古参キャラの一人だが、最近のメインストーリーにはあまり出てこないため私からするとあまり馴染みがない。

大谷美衣は2016にしか出てこない屈指の地味キャラ(ネコミミシルクハットが地味?)だが、初めてプレイしたときに出てきたため思い入れがある。
それと、パワフェスでは自分が操作するときはフル操作モードなんですね。他のモードは、例えば投球を行なって相手が打ち返してきた場合、守備を行なうわけですが、この辺は全部オート操作といってコンピュータが自動でやってくれるのです。この守備の操作というのが自分で操作するとなるとめちゃくちゃ難しいので、大抵の人はパワフェスで初めて守備を操作することとなるわけです。
この守備がね~……
本当に難しいんですよね~……。
画面の都合上仕方ないんですが、打球を返されるとね、だいたいの方向しかわからないんですよ。だいたいショートの方向ってのはわかるんですけど、それが三遊間なのか二遊間なのか判断する時間がほんの数フレームしかないんです。その刹那で積極守備ができるかっ!?本来であればゴロアウトって凡退の代名詞なんですけど、ゴロを処理できずに内野安打になってしまうことがめちゃくちゃ多いんですね。
そんなだから私も2016で初めてパワプロをやったときもパワフェスは過去キャラが出てくる高難度モードということで「ベテランファン向けなんだろうな」と思って全然触らなかったんですね。
なんですが……、ある程度やってこれに慣れるとその展開の速さが癖になるんですね。
時間がかからないわけではないんですが、とにかく余計な要素が少ないので試合に集中できるのです。パワフェスはストーリーが1パターンしかないため1回見てしまえば全スキップできるし、サクセスのように特定のキャラの好感度を上げて……とかそういう時間がかかる要素も少ないのですね。やることといえば試合だけ。つまり最も試合濃度が高く野球ゲーム野球ゲームしてるモードがパワフェスなのです。格ゲーのアーケードモードとかに近いのかも?
キャラクターがたくさん登場するというのもいい点で、一度仲間にしたキャラクターは図鑑に登録されていきます。私はポケモン不思議のダンジョン空の探検隊でポケモン全員を仲間にした経験のある人間です()
コンプしたくなるよな!
リプレイ性が高いのはサクセスもそうですが、パワフェスは独自の引継ぎ要素があり、前の周でレベルを上げたキャラクターはそのレベルを一定数引き継ぐのです。そしてゲーム開始時にはランダムピックアップされたキャラクターのうち5人を最初から仲間として連れていけるシステムになっています。ただし初期メンバーとして連れて行ったキャラのチームは相手としては出てこなくなるので、1チームに欲しいキャラが2人いる場合は相手に出てくることを期待して選ばないという選択肢もあると割と戦略的です。例えば、強打者キャラとしてバンガードを初期メンバーに選んでしまうと、レッドエンジェルスが敵として出てこなくなるため神童やマイルマンといった強いピッチャーを仲間にできなくなるということなんですね。(この理由で2016のパワフェスではパピヨンが強かった。二刀流だし、当時のドラフ島連合は連合って言ってるわりにパピヨン1人しか所属していなかったため初期メンバーに選ぶデメリットが無かったから。)
それと、フル操作モードで難易度が高いのはその通りなのですが、フル操作であるがゆえに逆にほかのモードではあまりいじれないスタメンや代打、投手交代、代走などすべての采配を自分で振るえるのも、慣れると楽しみとなります。
と、このように
試合濃度の高さ・収集・戦略性・高いリプレイ性など独特の面白みがあるのがパワフェスというモードでした。
パワフルフェスティバル アドベンチャー
パワフェスといえば上述の通り面白いモードではあるのですが、2016をはじめとして2018,2020,2022と8年間も同じルールで収録されていたもんだから、完全にマンネリ化していました。いくらキャラクター図鑑を埋めてレベル上げをしていても、新作が出るとまたすべて0からやり直しなので、新作が出ることが逆に足かせになっていたのですね。そういった状況の中なので、新作の2024では従来のパワフェスを廃しパワフェスアドベンチャーと改めゲームそのものにテコ入れを行ないました。
……が、これが個人的には完全に仇になっています。
というのは、新たに追加されたイベントが全く面白くないばかりか、上で説明したパワフェスの良さのほとんどを消してしまっているからです。本当に何もかもがつまらなく、筆舌に尽くしがたい面白くなさとなっています。誰がこれを面白いと判断したのか教えてほしいくらいです。
そもそもパワフェスは周回を前提としたゲームであり、前作までのパワフェスは試合以外の要素が極力排され試合→試合→試合→……と密度の高いパワプロ体験をすることができました。新作はというと、試合が始まるまでにサクサクセス風のボードゲームが追加されました。しかしこれ実質的に試合までの手間が増やしただけです。そのボードゲームでは、1マスごとに選手やマネージャーといったキャラクターが配置されており、ミニゲームで勝利することでそのキャラクターを仲間にすることができる……というものなのですが、ここにまず大きな問題が2つあります。
まず、
手に入るキャラクターのゲームバランスが悪すぎるということ。
パワフェスアドベンチャーは全5ステージ構成ですが、ステージ1ではそんなに強くないキャラしか出てきません。1チームの定員が23名なので、1つのポジションに強いキャラが入ってしまうと、その他大勢の弱いキャラクターは採る意味のないハズレ枠になってしまいます。キャラゲーとしてそれはあまり良くない。ゲーム的には強いキャラが1人いればそれでいいのだが、だったら大量にいる有象無象のミートFパワーEみたいなキャラは何のためにいるんだ?となります。
次に
ミニゲームが全くもって面白くないこと。
一応パワプロのフォーマットを使って的当て・内野守備・フライキャッチなど野球っぽい動作を行なうのですが、ほとんどが運ゲーなのです。守備のミニゲームをやるんだから守備練習くらいにはなる?かと思いきや、まったくそんなことはないんですね。中でも一番納得がいかないのがフライキャッチ!これは「ボール落下点を予測し、その位置に早く移動したら得点」というルールなのですが、普通の試合のときに出る落下点予測が出ないため、それっぽい位置に移動してそこに落ちてくるのを待つだけのただのお祈りゲーです。あまりに運ゲーすぎるためか、
キャッチに失敗しても得点できます。というかキャッチできたことがありません。なぜ?アウトにできてないんだけど……。
後半になるとミニゲームのほかに3イニング制の試合をやらされることがあり、
これがマジの虚無となっています。ミニゲームより確実に長引くし、勝ったところで選手が1人増えるだけ。
しかし、これはただのミニゲーム。そのあとに控える試合が楽しければまあ満足です。
では試合は面白いのかというと、
そんなことはありません。残念ながら……。
今回のパワフェスアドベンチャーでは1試合ごとに
これまでのラスボスが出てきます。ネタバレになってしまうのだが、パワフェスはストーリーが1パターンと書いたけど、一応ストーリーがあるわけですよ。そしてそのストーリーに準じたボスがラスボスで出てくるからテンションが上がるわけですね。
いきなりラスボス戦で情緒もなにもないだろ!

1戦目からリベンジされる謎現象。
初戦は2016のラスボスです。1面だから弱いとはそんなのはないぞ!めちゃくちゃキレのあるシュートに対しミートFとかで立ち向かう必要があります!今までの1戦目といえばバス停前高校とかだったよな!イレブン工科大とか!
なんで初手ラスボスなんだよ!あとこれは地味かもしれないが、相手は元ラスボスなのでフルボイスで喋ります。1球投げるごとに「構えろ!」とか「気を付けろ?」とかごちゃごちゃ喋って来るんですが、
これは鬱陶しいです。今まではラスボス戦だからセリフ付きであることに特別感がありましたが、全試合で全員ごちゃごちゃ喋るので感慨がありません。そのうえ、今回はポッと出てきていきなり対戦となるのに、セリフがラスボスのものなのでやたら大物然としているというか、端的に言うと辛辣で性格の悪いものになってしまっています。
全編煽られ続けるゲーム体験 is 何?これでやる気出す人っているの?「お前は予告三振だ、矢部!」ってのは、ボスが言う分にはまあ良いんですが、全試合そのノリだとキツい。もっと言うと、2016のときはそれまで実況をしていた熱盛が闇落ちしてラスボスになったから試合中も自分で実況しているという理由付けがありましたが、それすらもないのです。急に出てきてやたら喋る。しかもラスボスは全員二刀流なうえにスタミナ化け物なので完投してくるほか、仮にスタミナを削り降板させたところであとに出てくるのがコントロールAの総変化13みたいなお化けばっかりなので休まる隙がほぼ無い。
何地獄に落ちたらこういう罰を受けなきゃいけないんだ?
そして熱盛に勝つとまたボードゲームをやり、次に2018のボス、
直前に出てくる黒獅子重工の部長の方が強いことで知られるクイーンココロが出てきます。勝てばまたボードゲーム、大量のつまらないミニゲーム。んで次は2020のフォイボス、そんでまたボードゲームと……
テンポが悪いです。
さらに言うと、選手にはそれぞれレベルの概念があり、強力な選手でも最初から最強というわけではないんですね。なのでレベルを上げる必要があるのですが、経験値を手に入れる方法はただひとつ、
試合に勝つしかありません。
どういうことかというと、
初回プレイでは全員レベル1の状態でラスボス連中と戦う必要があるということです。これマジ?初心者お断りすぎない?
まあなんだかんだ言って今回のラスボスまでやってくるわけですが、
ここからは問題点しかありません。
いやここまでも全部問題点だったけど?
まず今回のラスボスは神様キャラというか、野球をやりたいから主人公に強いチームを作れと指示してくる……というのがおおもとのストーリーなんですが、キャラクター付けのためとは思いますが話に無理やり割り込んできて好き勝手喋って消えるという、
悪いオリキャラ創作と同じ展開になってしまっています。
いよいよ本番のラスボス戦となるわけですが、ラスボスチームは
完全固定になっています。
完全に固定です。しかも全員弾道4のパワーAとか。
今までのパワフェスであれば、ラスボスチームはそれまで対戦した相手チームのメンバーで、主人公がチームに勧誘しなかった選手……ということで、苦手な球を投げる投手がいるチームは道中で選ばないとかそういう戦略があったわけですが、今回は全くありません。
面白みがひとつ消えています。
そしてこれは衝撃なんですが、今作は
チームメンバー全員が次回引継ぎとなります。レベル込みで。いやー、周回ゲーでこれはちょっとあり得ないですね。
経験値入手の機会が少なすぎて1周しても1とか2とかしか上がらないから、引継ぎなしだと後半のボードで出てくるキャラの育成がマジで無間地獄になってしまうという面はあるにせよ……いったいどこのバカが★400超えの選手で固めているチームから1人外して★170とかを勧誘するっていうんだ?
登場キャラは300人くらいいるけど、そのほとんどが選ぶ価値のない選択肢になっているんですよ。下手に勧誘してしまうと引き継がれてしまうので、最初から触る価値自体ないっていう……。
2周目をやるとして、メンツは決まっているんだからボードゲーム全スルーしてボス直行じゃないですか。そんでラスボス全員倒してサッたんと再戦?そんで勝った負けたって?
表が出るまでコイン投げでもしてた方がマシです。
コインは落ちてくるまで1秒もかからないので。
パワフェスは死んでしまった
そんなこんなで、私が好きだったパワフェスは死んでしまいました。
敵が固定、味方も固定なのでローグライク的な駆け引きや戦略性は一切失われました。アドベンチャーっていうぐらいだからロールプレイングに近いのかもしれない。ロールプレイングだったら図鑑埋めもレベル上げも、言ってしまえば雑魚敵との戦闘とかももともと作業だし、レベルを上げてラスボスを倒すっていう構図はまあわからないでもないし。なぜ完成されているゲームをひとつ潰してこれにしなきゃいけなかったのか、なぜ試合でしか経験値が手に入らずしかも勝てないとレベルが上がらない仕様にしたのかは謎だが……。
なんにせよ、ロールプレイングならストーリーが必要だ。知っての通りパワフェスにはそこまで重厚なストーリー性というものがない。ストーリー性がないかわりに、ランダム要素による高い戦略性、つまりローグライク性があったわけだ。ローグライクにはリプレイ性が必要で、そのために試合以外の要素が極力排されていた。つまるところパワフェスは単なる懐古厨向けのキャラゲーではなく、単体で完成しているゲームだったのだ。
今回のパワフェスアドベンチャーでは、ラスボスの討伐というロールプレイング的な要素を付け加えるために必要な修整を行なわなかったがためにこの惨状になったのではないかと思う。つまりこれはまだα版なのだ。
パワフェスがマンネリなので新要素を足してみたんだけど、どうだろうか?という段階であって、テストプレイを行なってブレインストーミングを行なって、という段階にはまだたどり着いていないのだ。
ということで、2025年のアップデートではそれらを済ませたβ版が配信されることでしょう。
あ、でもね、パワフェスアドベンチャー、1個だけいいところあります。
相手が全員ラスボスだからずっと喋ってるんで、熱盛の薄ら寒い実況がないところ。アレ嫌いだったんだよねー。