マジック:ザ・ギャザリングはルールが完璧なゲームとしても有名です。
すべてのカードをルール通りきちんと処理できるので、ほかのカードゲームのように、カードとカードで処理がかち合ってしまってその場のジャッジの判断に任せる、という状況が発生しないゲームなのです。
しかし、完璧であるがゆえにときに複雑で、想像もしないタイミングで想像もしない呪文を唱えられたりするものです。
アリーナでは処理の履歴なども見れないので、知らないルールがあるとよくわからないまま相手にゲームを進められてしまうこともあります。
テキストもルールにのっとった文体なので、一見して理解しにくい文章になっていることもありますしね。
※基本的にカードプールはヒストリック・エクスプローラー・パイオニア内のこととして書いています。
◆もくじ◆
◆「死亡する」ということ◆ ,
◆「破壊不能」への対処法◆ ,
◆「マナコストを支払わずに唱える」ということ◆ ,
◆接死と先制攻撃、トランプル◆ ,
◆特性定義能力(多相と欠色)◆ ,
◆色の組み合わせとその呼び方◆ ,
◆状況起因処理◆ ,
◆変身する両面カード◆ ,
◆カード・タイプ◆
◆「死亡する」ということ◆
マジックのテキストで結構混乱を呼ぶのがこの表現。
ほかのゲームなら「破壊されたとき」とかいう表現になっているので、マジックで「このクリーチャーが死亡したとき」と書いてあって、(破壊されたときに誘発なんだな)と認識していると、破壊されたと思っても誘発しなかったりしてなんなんだよと思った経験があります。
マジックの総合ルールによると“700.4 「死亡する/Die」という語は「~が戦場から墓地に置かれる」ことを意味する。 ”とあります。
「戦場にいたクリーチャーが、なんらかの処理によって墓地に置かれる」ということをマジックでは「死亡する」と呼んでいるわけですね。
つまり「破壊される」のほかに「墓地に置かれる」という条件が必要なわけです。
たとえば《神々の憤怒》など、赤には死亡することを置換するダメージソースが存在します。
神々の憤怒 / Anger of the Gods (1)(赤)(赤)
ソーサリー
神々の憤怒は各クリーチャーにそれぞれ3点のダメージを与える。このターン、これによりダメージを与えられたクリーチャーが死亡する場合、代わりにそれを追放する。
この場合、クリーチャーがタフネス以上のダメージ(致死ダメージ)を受けると、状況起因処理によって墓地に置かれ、死亡するという処理になりますが、《神々の憤怒》の効果により死亡することが追放に置換されるため、クリーチャーは死亡せず追放されます。
そのため、死亡誘発能力を持っているクリーチャーでも、その能力は誘発せず追放されることになります。
ここまでなら単純なことなのですが、問題はクリーチャーが破壊不能を持っていた時。
通常、破壊不能の対策として追放は有力なので、《神々の憤怒》で死亡させる代わりに追放すれば破壊不能にも対処ができそうな気がします。
が、結果からいいますとこのカードでは破壊不能に対処することができません。
破壊不能を持っていると、上記の「致死ダメージを受けたため状況起因処理によって墓地に置かれる」という処理を無視することになっています。
(cf. “702.12b 破壊不能を持つパーマネントは破壊されない。そのパーマネントは致死ダメージで破壊されることもなく、致死ダメージをチェックする状況起因処理を無視する(rule 704.5g 参照)。” )
これにより「致死ダメージを受けているので墓地に置かれる」という処理が無視されるためクリーチャーは死亡せず、死亡しないので追放にも置き換わらないというわけですね。
一般的に、生き物が殺されて墓地に入れられれば死亡したということなので、そういう理解をしておくと混乱が少ない気がします。
◆「破壊不能」への対処法◆
マジックを始めたばかりのころであるなら、この破壊不能というキーワード能力は最強に見えます。
「破壊する」という効果はもちろん、ダメージによる破壊も受け付けないので、一見対処不能に見えるのですね。
が、この破壊不能にも対処法はいろいろありますので、それを書いていきます。
①追放する
最も単純にして簡単に戦場からどかすには、追放するのがいちばん。
追放は破壊ではないので、破壊不能がきかないのです。
②バウンスする
手札に戻すのも一考。
バウンスの中にはライブラリに戻すというのもあるので、それを使えば実質的に追放と似たような結果になります。
③生け贄に捧げさせる
狙いを定めにくいという弱点はありますが、生け贄に捧げるという処理は破壊ではないため、破壊不能でも生け贄にはできます。
破壊不能だからといって単騎で立たせていると、生け贄に捧げさせるタイプの除去が飛んできて泣きを見るのはよくあること。
④タフネスにマイナス修正を与える
破壊不能を持っているのがクリーチャーであるなら、黒のカードによくあるタフネスへのマイナス修正を行えば破壊することができます!
というのも、破壊不能で無視するのは「致死ダメージによる状況起因処理」なので、「タフネスの最大値が0以下であることによる状況起因処理」をは無視できないからです。
ただし注意が必要なのは、例えばタフネスが2の破壊不能クリーチャーが1点のダメージと-1の修正を受けているという状況では、このクリーチャーは破壊されないということ。
見かけ上のタフネスは0ですが、中身は「タフネスが1のクリーチャーが致死ダメージを受けている」という状況ですので、破壊不能が効いてしまうのですね。
⑤出てくる前にハンデスする・打ち消す
破壊不能以外にも言えることですが、黒のハンデスや青の打ち消しを使って出てくる前に対処することができます。
破壊不能は戦場にあるときにだけ効果を発揮する常在型能力なので、カードとして手札にある間や、呪文としてスタックにある間は普通に対応することができるのです。
マッドネスや「打ち消されない」という能力もありますが、あまり見かけるものではありません。
⑥破壊不能を持たせない(失わせる)
とんちのような状況ですが、そもそも破壊不能を持っていなければ問題は何もないというわけです。
破壊不能を持たせるカードを妨害したり、破壊不能を失わせるカードを使えば、それは破壊可能なパーマネントになりますので、普通に破壊できます。
⑦それよりもデカいクリーチャーを立たせておく
破壊不能クリーチャーが頓挫する状況といえば、それよりも大きなクリーチャーが出てしまうこと。
攻撃宣言してもブロックされるだけだし、むしろアンタップで立たせておかないとそのクリーチャーのダイレクトアタックが決まってしまうため身動きが取れなくなるのです。
デカいもので蓋。単純明快ですね。
⑧コントロールを奪う
これまた珍しい状況ですが、破壊できなくてもコントロールを奪ってしまえば逆にこちらの利として数えることができます。
⑨無視する
脅威が出てきたら対処しなければならないと思うのは人間のサガですが、別に破壊不能の大物がいる間はゲームに勝てないというわけではありません。
相手のライフが0になればこちらの勝ちなのです。
こちらが盤面を握っている状態なら、遅々として出てきた大物なんかは無視して総攻撃すれば簡単に勝てることもあります。
◆「マナコストを支払わずに唱える」ということ◆
全知 / Omniscience (7)(青)(青)(青)
エンチャント
あなたは、あなたの手札から呪文を、それらのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
わかりやすいようで意外とわかりづらいこのテキスト。
基本的には超絶メリット能力であり、新規のカードにこの文章が印刷されていれば、とりあえずそれでデッキを組んでみるほどの威力があります。
開発部も「プレイヤーはコストを踏み倒すカードが大好き」と認知しているほどなのです。
たとえばこの《全知》は、手札の呪文に「マナコストを支払わずに唱えてもよい」という能力を追加します。
「マナコストを支払わずに唱えてもよい」というのは簡単にいうと、「
呪文を唱える際、マナコストを支払うかわりに、(0)を支払って唱えてもよい」という
代替コストを追加する能力なのですね。
「カード右上のマナコスト表示欄が(0)であるものとして唱えてもよい」と考えるとわかりやすいかも。
正規コストを失ったりしてるわけではないので、《全知》をコントロールしている場合でも、正規のコストを支払って唱えることもできます。
(ちなみに「マナコストを支払わずに唱える」と言い切りの形になっている場合は、逆に正規コストを支払うことはできません。)
代替コストというのはルールに興味がある人じゃないとあまり聞きなれないと思いますが、文字通り代わりのコストってことですね。
★マナコストを支払わないことで損をするもの
先述の通り、マナコストを支払わないで済むことは強力なメリット能力ですが、一部の呪文では、マナコストを支払わなかったがゆえに少し損をすることもあります。
・向上呪文
イルーナの神話 / Mythos of Illuna (2)(青)(青)
ソーサリー
パーマネント1つを対象とし、それのコピーであるトークンを1つ生成する。この呪文を唱えるために(赤)(緑)が支払われていたなら、代わりに「このパーマネントが戦場に出たとき、これがクリーチャーである場合、あなたがコントロールしていないクリーチャー最大1体を対象とする。これはそれと格闘を行う。」を持つことを除きそのパーマネントのコピーであるトークンを1つ生成する。
不可解な幻視 / Unexplained Vision (4)(青)
ソーサリー
カードを3枚引く。
一徹 ― この呪文を唱えるために青マナが3点以上支払われていたなら、占術3を行う。
「向上呪文」とはキーワード能力ではなく俗語で、支払ったマナに含まれる色によって能力が追加または変更される呪文のことを言います。
テーブルトップだとどの土地で何色のマナを出すのかがややこしいなどの問題があったため、あまり見る機会はありません。
マナコストを支払わず唱えた場合、参照できる色が1つもなくなるため、強力な方の効果は発揮されなくなります。
・(X)をマナコストに含む呪文
石とぐろの海蛇 / Stonecoil Serpent (X)
アーティファクト クリーチャー — 蛇(Snake)
到達、トランプル、プロテクション(多色)
石とぐろの海蛇は、+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。
0/0
マナコストに(X)を含む呪文をマナコストを支払わずに唱えた場合、参照できるXの部分がありませんので、X=0になってしまいます。
唱えた時点で既にコストを支払い済みなので、追加でXの分を支払うとかはできません。
なので、例のこの《石とぐろの海蛇》であれば、X=0だと+1/+1カウンターが0個置かれた状態で戦場に出ることになり、戦場に出次第状況起因処理でさっさと墓地に置かれてしまうことになりますね。
★マナコストを支払わない場合でも踏み倒せないもの
・マナコスト以外のコスト関連
命取りの論争 / Deadly Dispute (1)(黒)
インスタント
この呪文を唱えるための追加コストとして、アーティファクトやクリーチャーのうち1つを生け贄に捧げる。
カード2枚を引き、宝物(Treasure)トークン1つを生成する。(それは、「(T),このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクトである。)
例えばこの《命取りの論争》のように、追加コストとしてマナ以外のコストを要求するカードがありますが、この部分は踏み倒せません。
これはマナコストではないので、まあわかりやすいですね。
・追加コスト関連
スレイベンの守護者、サリア / Thalia, Guardian of Thraben (1)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
先制攻撃
クリーチャーでない呪文を唱えるためのコストは(1)多くなる。
2/1
《スレイベンの守護者、サリア》のように、呪文のコストを増やすカードがありますが、これも踏み倒せません。
これは、呪文のマナコストを増やしているわけではなく、代替コストによって(0)になったマナコストにさらにコストが追加されるからです。
血の長の渇き / Bloodchief's Thirst (黒)
ソーサリー
キッカー(2)(黒)(あなたはこの呪文を唱えるに際し、追加で(2)(黒)を支払ってもよい。)
マナ総量が2以下の、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。それを破壊する。この呪文がキッカーされていたなら、代わりに、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。それを破壊する。
キッカーのような追加コストを要求するキーワード能力がありますが、これも踏み倒せません。
キッカーはマナで支払いますが、呪文のマナコストではなくキッカー能力へのコストだからです。
しかしこれは代替コストではないため、この《血の長の渇き》であれば、まずマナコストである(黒)を踏み倒し、その後唱えるに際して追加で(2)(黒)を払えばちゃんとキッカーの効果を得ることができます。
・代替コスト関連
掘り起こし / Dig Up (緑)
ソーサリー
切除(1)(黒)(黒)(緑)(あなたはこの呪文を切除コストで唱えてもよい。そうしたなら、角括弧の中の記述を削除する。)
あなたのライブラリーから〔基本土地〕カード1枚を探し、〔公開し、〕あなたの手札に加える。その後、ライブラリーを切り直す。
これが一番わかりづらい!
切除のように、唱えるに際して正規のマナコストではないコスト(
代替コスト)で唱えることを許可するキーワード能力があります。
マジックのルールでは「
代替コストの代替コストはできない」となっていますので、もともと代替コストであるこれを踏み倒すことはできません。
つまりこの《掘り起こし》は、《全知》の影響下では「(緑)を支払い、正規テキストのまま唱える」か「(緑)を踏み倒して(0)を支払い、正規のテキストのまま唱える」か「(1)(黒)(黒)(緑)を支払い、角括弧内の記述を削除して唱える」の三択になるというわけです。
このように1枚のカードに複数の代替コストが設定された場合、「正規コスト」「代替コスト①」「代替コスト②」のいずれかを選んで唱えるという形になります。
代替コストを設定するキーワード能力には
フラッシュバック、
マッドネス、
超過、
脱出、
絢爛、
変容、
予顕、
現出、
降霊、
切除、
奇襲……などがあります。
《全知》の影響下であっても、これらの能力を踏み倒すことはできません。
踏み倒すことができないというだけで、ちゃんとそっちの代替コストを支払えば唱えることは可能です。
◆接死と先制攻撃、トランプル◆
不吉なとげ刺し / Fell Stinger (2)(黒)
クリーチャー — ゾンビ(Zombie) 蠍(Scorpion)
接死(これが何らかのダメージをクリーチャーに与えたら、それだけで破壊する。)
濫用(このクリーチャーが戦場に出たとき、あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。)
不吉なとげ刺しがクリーチャー1体を濫用したとき、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカード2枚を引き、2点のライフを失う。
3/2
「接死」といえば言わずと知れた、戦闘や格闘を行った相手を問答無用で破壊するキーワード能力ですが、これがダメージに関連する他のキーワード能力と組み合わさると、直感的でない処理が起こります。
・接死の処理
デュエルマスターズの「スレイヤー」と感覚が似ているため、「戦闘を行った後、相手のクリーチャーを破壊する」という能力のように思えます。
もちろんその認識でも間違いではないのですが、厳密に言うと
①接死を持つ発生源(通常はクリーチャー)が、戦闘ダメージ、あるいは能力によるダメージとして他のクリーチャーに1点以上のダメージを与える。
②ダメージを与えられたクリーチャーは、「接死を持つ発生源によってダメージを与えられた状態のクリーチャー」となる。
③状況起因処理には「接死を持つ発生源にダメージを与えられたクリーチャーは、タフネスが1以上であっても破壊される」という処理がある。
④戦闘終了後に状況起因処理がチェックされ、上記の条件を満たしているため破壊される。
……という処理で破壊されるのです。
つまり破壊する能力ではなく、破壊という処理を行わせる能力なのですね。
これだけであればまあ単純なことだし、特にこの処理を覚えていなくても「……つまり戦闘後に破壊されるってことだろ」と覚えても何も問題はありません。
・接死とトランプル
トランプルも非常にルールがややこしい能力ではあるのですが、「与えるダメージがブロッカーのタフネスを超えていれば貫通してダメージを与える」という認識でほとんど問題がない能力です。
しかしこれも厳密に言うと、「与えるダメージを
ブロッククリーチャーの致死ダメージを超えるように割り振ったあと、その余りのダメージをもともとの攻撃先に与える」という能力なのですね。
「致死ダメージ」というのは、そのクリーチャーが確実に死亡する量のダメージのことで、通常であればそのクリーチャーのタフネス分です。
例えば
5/5のトランプル持ちクリーチャーAの相手への攻撃を
3/3のクリーチャーBでブロックしたとすると、
クリーチャーAによる5点のダメージを、まず
クリーチャーBが確実に死亡するように3点を割り振り、その余りである2点を
クリーチャーBのコントローラーに与える、という処理になるわけです。
ダメージが貫通しているように見えますね。実際この認識で全く問題はありません。
……ところで、このクリーチャーAが接死をも併せ持っていたら、どうなると思いますか?
接死を持つ発生源によるダメージは、1点であっても相手が確実に死亡するダメージ、つまり
致死ダメージです。
5/5で接死とトランプルを持つクリーチャーAの相手への攻撃を
3/3のクリーチャーBでブロックしたとすると、
クリーチャーAによる5点のダメージを、まず
クリーチャーBが確実に死亡するように
1点を割り振り、その余りである
4点を
クリーチャーBのコントローラーに与える、という処理になります!
なんか直感的ではありませんが、ルール上こうなります。
マジックのルールは「直感的にわかりやすいかどうか」ということをかなり考慮して考案されているため、このふたつの能力を最初から併せ持ったクリーチャーは存在しませんが、キーワード・カウンターなどで能力が追加されるとときおり発生することがあります。
・接死と先制攻撃
先制攻撃といえば主に白のクリーチャーが多く持つ、戦闘でちょっとだけ有利になる地味目な能力です。
先制攻撃を持つクリーチャーは、そうでないクリーチャーと比べて早く戦闘ダメージを与えられるため、相打ちになることを回避できる能力です。
これ単体ではさほど強力というわけではなく、あってもなくても気にならない能力として有名です(そうか?)。
しかして、これも接死と合わさると非常に強力な能力に様変わり。
例えば、
3/3のクリーチャーCが、
2/2のクリーチャーDら3体にブロックされるとします。
クリーチャーCが先制攻撃だけを持っている場合であれば、
クリーチャーD1体目に2点ダメージ、2体目に1点を割り振ったところで
クリーチャーCの先制攻撃は終了、残っている
クリーチャーD2体に殴り返されて打ち負けてしまいます。
しかし
クリーチャーCが先制攻撃と接死を持っていた場合、
クリーチャーD1体目に1点の致死ダメージ、2体目にも1点の致死ダメージ、3体目にも1点の致死ダメージを割り振ることができ、
クリーチャーCの先制攻撃が終了した時点での状況起因処理で
クリーチャーDら3体すべてが破壊され、殴り返しは一切ありません。
しかもブロックされたときは、ダメージを与える順番はブロックされたプレイヤーが選ぶことができるため、「ブロックしているクリーチャーの数が、攻撃している接死先制攻撃のクリーチャーのパワーよりも多い」かつ「そのすべてが攻撃している接死先制攻撃のクリーチャーのタフネスよりも高いパワーを持つ」というかなり限られた状況じゃないと戦闘で負けないという非常に強力なクリーチャーになります。
しかしこれもまた直感的ではないため、トランプルと同様、最初からこれらふたつを併せ持ったクリーチャーは
なんと存在します。
グリッサ・サンスレイヤー / Glissa Sunslayer (1)(黒)(緑)
伝説のクリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) ゾンビ(Zombie) エルフ(Elf)
先制攻撃、接死
グリッサ・サンスレイヤーがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、以下から1つを選ぶ。
・あなたはカード1枚を引き、1点のライフを失う。
・エンチャント1つを対象とする。それを破壊する。
・パーマネント1つを対象とする。それの上からカウンター最大3個を取り除く。
3/3
この《グリッサ・サンスレイヤー》を戦闘で破壊しようとするならば、パワー4以上のクリーチャー4体以上で同時にブロックする必要があります。
そのうえで、4体のうち3体は相打ちでもっていかれます。
このようにこのふたつを併せ持っているクリーチャーは非常に強力。
……という風に、能力と能力が組み合わさると直感的でない処理が起こるという話でした。
◆特性定義能力(多相と欠色)◆
血統詐称者 / Bloodline Pretender (3)
アーティファクト クリーチャー — 多相の戦士(Shapeshifter)
多相(このカードはすべてのクリーチャー・タイプである。)
血統詐称者が戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプ1つを選ぶ。
その選ばれたタイプである、他のクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、血統詐称者の上に+1/+1カウンター1個を置く。
2/2
世界を壊すもの / World Breaker (6)(緑)
クリーチャー — エルドラージ(Eldrazi)
欠色(このカードは無色である。)
あなたがこの呪文を唱えたとき、アーティファクト1つかエンチャント1つか土地1つを対象とし、それを追放する。
到達
(2)(◇),土地を1つ生け贄に捧げる:あなたの墓地から世界を壊すものをあなたの手札に戻す。((◇)は無色マナを表す。)
5/7
数あるキーワード能力の中で、多相と欠色はかなり特殊な立ち位置にいます。
これらふたつはルール上、常在型能力、それも特性定義能力という分類になります。
……どういうことかと言いますと、これらふたつの能力は、能力を失ったとしても
それによって定義されていた特性を失わないのです。
この特性定義能力とは、パワーやタフネス、マナコスト、カードタイプなどのような実際にカードに書かれている能力と同じ扱いになっています。
カードの能力を失わせる能力を使ってもP/Tが0/0になって死ぬ、ということがないように、多相を失ってもすべてのクリーチャータイプであることを失わず、欠色を失っても無色であることを失わないということです。
さらに、この能力は戦場以外の領域でも常時発揮されています。
あなたはライブラリからエルフを探す能力で多相持ちを探せるし、多相持ちを唱えたときにはゴブリンクリーチャーが唱えられたときに誘発する能力が誘発しますし、《ドローガーの再生》で人間と多相持ちを回収することができます。
また、能力にはあまり関係ありませんが、多相を持つクリーチャーはすべて多相の戦士でありますが、多相の戦士すべてが多相を持つわけではありません。
多相を持たない多相の戦士は、戦場を含めあらゆる領域で多相の戦士でしかありません。
どうしてかというと、一部の多相の戦士(シェイプシフター)が持つ「戦場のパーマネントのコピーとして出る」みたいな能力で十分多相だからですね……(?)。
◆色の組み合わせとその呼び方◆
マジックには5つの色があります。
白、青、黒、赤、緑。ご存じですね。
それぞれ単色で組まれたデッキは、白単色であれば白単、青単色であれば青単、黒の単色であれば……と呼ばれていくわけです。
では、2色を使ったデッキはなんと呼ばれるでしょうか?
例えば白と青を使ったデッキであれば……?
白青?いいえ、
アゾリウスと呼ばれます。
同じように、黒赤ならラクドス、青緑ならシミックと、そういう風に呼ばれます。
これは、2色がテーマとして設定されていたラヴニカという次元における10のギルド、その名前に由来しています。
このラヴニカは、カードパワーのバランスが非常に良く、どのギルドが強いというのがなかったためいろいろなデッキが入り乱れて活躍できたこともあり、人気が高かったそうです。
パイオニア以上の現代のマジックでは最強の土地とされるショックランドもこの時代に登場したものです。
人気があるため、ラヴニカという次元は2005年、2012年、2018年と何度も再訪されており、プレイヤーたちは2色といえばラヴニカのギルド、とすっかり覚えてしまったわけですね。
とはいえ、その時代をよく知らない人からすると、はっきり色で言えばいいだけなのによくわからない称号に置き換えられていて理解しづらいというのも事実です。
私はカルドハイム(2021年)から始めたプレイヤーなので、当時の熱狂とかははっきり言ってよくわからず、「どうしてプリズマリ大学のデッキなのにイゼットと呼ぶんだ?」と思っていました。
(逆に、こういった専門用語を使うと慣れている人っぽくてカッコいいという感覚も分かるのですが、このサイトでは極力こういったギャングエイジ的専門用語は使わないように心がけています。)
2色の呼び名対応表
| 名前 |
色 |
名前 |
色 |
| アゾリウス評議会 |
白青 |
オルゾフ組 |
白黒 |
| ディミーア家 |
青黒 |
イゼット団 |
青赤 |
| ラクドス教団 |
黒赤 |
ゴルガリ団 |
黒緑 |
| グルール一族 |
赤緑 |
ボロス軍 |
赤白 |
| セレズニア議事会 |
緑白 |
シミック連合 |
緑青 |
以上が対応表です。
これに従い、赤緑のアグロデッキなら「グルール・アグロ」、青黒のコントロールデッキなら「ディミーア・コントロール」とかいう風に呼ばれます。
が、別に赤緑アグロ青黒コントロールでも通じます。
これらはいわゆる俗称なのですが、公式でもチャレンジャーデッキなどを発売する際はタイトルに用いられるほど浸透しているものなので、覚えておくと検索する時などに便利です。
……同様に、3色デッキを言い表す際にも特有の言い回しがあります。
白青黒ならエスパー、黒緑青ならスゥルタイとか呼ばれます。
これは「アラーラ」という次元にかつて存在した断片世界の呼び名と、「タルキール」という次元に存在する5つの氏族の名前からとられています。
これらの次元はそれぞれ2008年、2014年とだいぶ昔に舞台になったっきり、ラヴニカほどの人気はないためか再訪がなされておらず、当時を知る人でないとやはりあまりなじみはありません。
が、3色の場合は2色と違って赤白青と色の名前で呼ぶよりはジェスカイカラーと言ってしまった方が早いので、覚えた方が便利といえるかもしれませんね。
多色の呼び名対応表
| 友好2色 |
色 |
敵対2色 |
色 |
弧3色 |
色 |
楔3色 |
色 |
| アゾリウス |
白青 |
オルゾフ |
白黒 |
エスパー |
白青黒 |
アブザン |
白黒緑 |
| ディミーア |
青黒 |
イゼット |
青赤 |
グリクシス |
青黒赤 |
ジェスカイ |
青赤白 |
| ラクドス |
黒赤 |
ゴルガリ |
黒緑 |
ジャンド |
黒赤緑 |
スゥルタイ |
黒緑青 |
| グルール |
赤緑 |
ボロス |
赤白 |
ナヤ |
赤緑白 |
マルドゥ |
赤白黒 |
| セレズニア |
緑白 |
シミック |
緑青 |
バント |
緑白青 |
ティムール |
緑青赤 |
以上が完全な対応表です。
20個もワードが出てくると面喰らいますね……。
◆状況起因処理◆
マジックは、お互いに呪文やパーマネントの能力を駆使して戦います。
しかし、厳密に見てみると、我々はカードには書かれていない処理を直感的に行っています。
たとえば、《ショック》の効果。
ショック / Shock (赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。ショックはそれに2点のダメージを与える。
対象1体に2点のダメージです。わかりやすいですね。
これを《今田家の猟犬、勇丸》に撃ってみましょう。
今田家の猟犬、勇丸 / Isamaru, Hound of Konda (白)
伝説のクリーチャー — 犬(Dog)
2/2
タフネス2のクリーチャーに2点のダメージを与えれば、想像通り、勇丸は破壊されます。
戦場にあった勇丸を墓地に置きます。
100人プレイヤーがいれば100人こういう操作をしますね。
しかし、《ショック》には「この効果でクリーチャーのタフネスが0以下になったならば、それを破壊する。」とはどこにも書かれていませんね。
勇丸は、ショックの効果によって破壊されるのではなく、
状況起因処理によって破壊されるのです。
このような、呪文や能力によって発生した状況に起因して行われる処理を状況起因処理と呼びます。
「ライフが0以下なら敗北する」というのも、「忠誠度が0であるプレインズウォーカーは墓地に置かれる」というのも、「戦場以外の領域に移動したトークンは消滅する」というのもすべて状況起因処理です。
・状況起因処理の基礎知識
状況起因処理のチェックは、ゲーム中かなり頻繁に行われています。
いつ行われているかというと、「プレイヤーが優先権を得たとき」です。
つまり、アンタップステップとクリンナップフェイズを除く、各フェイズやステップの開始時、あるいは呪文や能力の解決が済んだ直後に行われます。
これはゲーム中数えきれないほど起こることであり、いちいち宣言してチェックしていたのでは膨大すぎてテンポが遅れますので、多くの場合は考えることなくゲームを進めていきますが、チェック自体は行われています。
状況起因処理は能力ではなく単なる処理であり、スタックに乗らないため、打ち消したり対応して何らかの行動を起こすことはできません。
対応をしたいのであれば、実際にその状況になってしまう前に行動を起こす必要があります。
しかし逆に言えば、
だれかが優先権を得る前に起こった処理であれば、状況起因処理のチェックはなされないということでもあります。
一番わかりやすいのは、絆魂を持つクリーチャーでブロックしたとき。
あなたのライフが3で、戦場には相手の5/5トランプルとあなたの2/2絆魂クリーチャーがいるとします。
そして相手の攻撃が宣言され、あなたはブロックを宣言しました。
相手のトランプルはあなたの絆魂2/2を貫通し、あなたに3点のダメージを与えますね。
ここでいったんはあなたのライフが0になります。
しかし、それと同時に絆魂によって2点回復できますので、戦闘終了時のあなたのライフは2となり、敗北を免れることになります。
戦闘のダメージが処理されている間はどのプレイヤーも優先権を得ることはないので、状況起因処理も行われません。
そのため、ライフが0である瞬間があっても、それで即座に負けになるわけではありません。
マジックで敗北するためには、敗北条件を満たしたうえで、状況起因処理のチェックを受ける必要があります。
ほかにも、なんらかの効果でタフネスが0であるクリーチャーが戦場に出るとき、それが実際に出るよりも前に《栄光の頌歌》を置くことができれば、状況起因処理の前にタフネスに+1の修整を与えることができるため、それを生存させることができます。
クリーチャーが戦場に出ることと、それが常在型能力によって修整を受けることの間には優先権が発生しないので、こういう結果になります。
狙って起こすのは難しいですが、不意に起こりうることなので、覚えておいて損はないはずです。
・状況起因処理の一覧
では、いったい何が状況起因処理として行われるのかを書いていきます。
- ライフが0以下のプレイヤーはゲームに敗北する。
わかりやすいですね。
敗北が決定してから行動を起こすことはできませんので、なにか対処をするならライフが0になる前に行いましょう。
- 前回の状況起因処理のチェック以降に、カードが1枚も存在しないライブラリーからカードを引こうとしたプレイヤーは、ゲームに敗北する。
ライブラリーアウトの処理です。ライブラリーが0枚のときにドローしなければならなくなったとき、敗北します。
「前回の状況起因処理のチェック以降に」というのは、一度ライブラリアウトを起こしたが、そのときになんらかの効果で敗北しなかったときでも、新たにライブラリアウトを起こせば毎回敗北のチェックを行うということです。
つまるところドローしようとしてできなかった場合に負けるというわけですが、これも厳密には「引こうとしたが引けなかったという状態のまま状況起因処理のチェックを受けると敗北する」という段階があります。
めったにないことですが、《マグマ・オパス》などのドローと火力が1枚に収まっている呪文で、相手のライフを0にすると同時にライブラリアウトを引き起こした際には、お互いに敗北条件を満たしているため、引き分けになります。
- 10個以上の「毒/poison」カウンターを持つプレイヤーは、ゲームに敗北する。
毒カウンターによる敗北の処理です。
毒カウンターは通常、一度得たものを減らすことができないため非常に強力なクロックのひとつです。
- トークンが、戦場以外の領域にある場合、存在しなくなる。
トークンの存在に関する処理です。
アリーナでは、トークンが戦場を離れる際はその場で掻き消えるように消滅しますが、実際の処理としては、きちんと移動後の領域に移動してから消滅することになっています。
そのため、トークンであっても死亡誘発は誘発しますし、手札に戻されていれば《トレイリアの大魔導師、バリン》のドローが誘発します。
「死亡するかわりに追放」などの置換効果もしっかり適用されます。
- 呪文のコピーがスタック以外の領域にある場合、それは消滅する。カードのコピーがスタックと戦場のいずれでもない領域にある場合、それは消滅する。
コピーされた呪文の存在に関する処理です。
インスタントかソーサリーであるコピーであれば、解決後墓地に置かれますが、そこで消滅します。
パーマネント呪文のコピーであるなら、そのまま戦場にトークンとして出ることができます。
これはコピーされた呪文カードがトークンとしてそのまま戦場に出ているだけで、新たにトークンを生成しているわけではないため、《倍増の季節》で増やすことはできません。
- タフネスが0以下のクリーチャーはオーナーの墓地に置かれる。再生はこのイベントを置換できない。
タフネスの最大値に関する処理です。
黒の呪文によくあるマイナス修整によって、タフネスの最大値が0以下になったクリーチャーは破壊されます。
これは再生や破壊不能をもってしても対処できない処理です。
マイナス修整が単純なダメージよりも強力な理由は、この処理があるためです。
- タフネスが0よりも大きく、ダメージを負っていて、それが負っているダメージの合計がそのタフネス以上であるクリーチャーは致死ダメージを受けていると言い、破壊される。再生はこのイベントを置換することができる。
致死ダメージに関する処理です。
ダメージを受けて死亡するというイベントはすべてこの処理によるものです。
マジックでは最も頻繁に行われている処理といえるでしょう。
破壊不能を持つクリーチャーは、この処理を無視します。
- 前回の状況起因処理のチェック以降に接死を持つ発生源からダメージを受けた、タフネスが0よりも大きいクリーチャーは破壊される。再生はこのイベントを置換することができる。
接死を持つパーマネントが与えるダメージに関する処理です。
このダメージは、戦闘によって与えられたかどうかを参照していないため、《チャンドラのマグムット》など自身をタップすることでクリーチャーに火力を飛ばすクリーチャーに接死を与えれば、確定除去のように扱えるというコンボがあります。
破壊不能を持つクリーチャーは、この処理も無視します。
また気づきにくいですが、プレインズウォーカーやバトルはこの処理の対象外です。
接死を持ったクリーチャーでプレインズウォーカーやバトルに攻撃しても、その攻撃によってカウンターを0にしない限りは破壊することはできません。
- 忠誠度が0であるプレインズウォーカーは、オーナーの墓地に置かれる。
プレインズウォーカーの忠誠度に関する処理です。
とどのつまり破壊されているわけですが、設定上プレインズウォーカーは、呪文によって呼び出された、プレイヤーに協力してくれている存在です。
忠誠度が0になると、彼らはそれ以上私たちに協力する気がなくなって戦場を離れてしまう、というフレーバーなのですね。
せっかく召喚に応じてくださったのですから、奥義発動までちゃんとお膳立てしましょう。
ちなみにプレインズウォーカーは基本的に忠誠度カウンターが乗った状態で戦場に出ますが、これは戦場に出るときの置換効果のひとつです。
そのため偽装によって裏向きのまま戦場に出てその後《こじ開け》などの効果で表向きになった場合は、忠誠度カウンターが乗るタイミングがないため、即座にこの処理で墓地に置かれてしまいます。
裏向きのクリーチャーが表向きになることは、単にカードが取っている位相が変わるだけで改めて戦場に出直しているわけではないためです。
- 同名の2つ以上の「伝説の/Legendary」パーマネントが同一のプレイヤーにコントロールされている場合、そのプレイヤーはその中から1個を選び、それ以外をすべてオーナーの墓地に置く。これを「レジェンド・ルール」と言う。
伝説のパーマネントの存在に関する処理です。
伝説のパーマネントは、それぞれ世界に1つしか存在しないため、2つ以上はコントロールできないというわけですね。
カード名が一致していて、どちらも「伝説の」というタイプを持っていればこれが適用されます。
逆に言うとカード名が違ったり、「伝説の」のタイプを失っていたりすればこのルールは適用されません。
プレインズウォーカーはカード名さえ違えば同一人物を複数人コントロールできますが、ルール上問題はありません。
《鏡の箱》など『「レジェンド・ルール」は適用されない』と書いてあるカードもあり、それが存在する場合はこの処理は無視します。
- 複数のパーマネントが「ワールド/World」という特殊タイプを持っている場合、その中でもっとも短い期間ワールドの特殊タイプを持っているものを除き、すべてオーナーの墓地に置かれる。もっとも短いものが複数ある場合、その全てがオーナーの墓地に置かれる。これを「ワールド・ルール」と言う。
ワールド・エンチャントに関する処理です。
ワールド・エンチャントはその名の通り、世界全体にかける大規模なエンチャントというフレーバーであるため、複数コントロールはできないというわけですね。
これは1994年初出のとても古いメカニズムであり、大規模であるという設定のわりに1マナ2マナで唱えられたり、必然的に2枚目以降が腐るため複数積みしにくかったり、相手もワールド・エンチャントを使っていると、ワールド・ルールによって間接的に除去されてしまったり、相手のクリーチャーにも強化を与えてしまったりと使いづらい要素が多く、さほど人気もなかったようなので再びお目にかかることはないとは思われますが、一応こういう処理もルールとしては残っています。
また関係ありませんが、これを改良したプレインチェイスというフォーマットもあります。
- 不正なオブジェクトあるいは不正なプレイヤーについているオーラや、何にもついていないオーラはオーナーの墓地に置かれる。
エンチャント・オーラの存在に関する処理です。
オーラはカードごとにつけられる対象に制限があります。
エンチャント(クリーチャー)とあればクリーチャーにしかつけられないし、エンチャント(プレイヤー)とあればプレイヤーにしかつけられません。
エンチャント(クリーチャー)のオーラがつけられていたクリーチャーが、なんらかの効果によってクリーチャーのカードタイプを失いアーティファクトになったとすると、オーラからするとそれは不正な対象となってしまい、この状況起因処理によって墓地に置かれます。
多人数戦などで、エンチャント(プレイヤー)のオーラをつけられていたプレイヤーが敗北してゲームから離れるときも、不正なプレイヤーについているオーラとなって墓地に置かれます。
また、何にもついていないオーラというのは通常存在しませんが、既に何かにつけられているオーラにクリーチャーのカードタイプを与えたりすると発生します。
マジックには「クリーチャーであるオーラや装備品は、別のクリーチャーにつけることはできない」というルールがあります。
オーラがエンチャント・オーラのタイプを失わないままクリーチャーになってしまうと、それは何にもつけられていないオーラとなるため、状況起因処理で墓地に置かれます。
なんかオーラオーラうるせえなここは
- 不正なパーマネントやプレイヤーについている装備品や城砦はそのパーマネントやプレイヤーからはずれ、戦場に残る。
装備品や城塞の存在に関する処理です。
装備品や城塞は、オーラとは違いアーティファクトとして戦場に残ることができます。
装備品は基本的にクリーチャーにしかつけることができないため、ついているクリーチャーがクリーチャーでなくなったなら、はずれます。
プレイヤーにつける装備品というのは今のところ存在しませんが、今後のために制定されたルールかもしれません。
ちなみに城塞というのは、土地につける装備品のことです。これを持つカードは《ダークスティールの駐屯地》しか存在しない、かなり珍しいタイプであるため、今度お目にかかることはほぼないでしょう。
- バトルやクリーチャーがオブジェクトやプレイヤーについている場合、それははずれ、戦場に残る。同様に、オーラでも装備品でも城砦でもなくバトルやクリーチャーやでもないパーマネントがオブジェクトやプレイヤーについている場合、それははずれ、戦場に残る。
「つける」という状態が可能なパーマネントは装備品や城塞やオーラだけであるということを示す処理です。
たとえば、既にクリーチャーについている装備品に、あらたにクリーチャーのカードタイプを追加すると、この処理によってはずれることとなります。
これは安全弁的な処理であるため、重要になることは少ないと思いますが、強力な装備品でもクリーチャー化することができればただのアーティファクトになるということなので、ごくまれに使えるときもあるのかも。
- 単一のパーマネントに、+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが乗っている場合、その2つのうちで少ないほうと同数だけ、両方のカウンターを取り除く。
+1/+1カウンターと-1/-1カウンターの相互作用に関する処理です。
これら両方が1つずつ乗っていれば、+1したあと-1して結果プラマイ0になりますが、それをわかりやすくカウンターを対消滅させることにしたというルールです。
-1/-1カウンターはあまりみかけないため重要視する必要はありませんが、《損魂魔道士》などを相手にする際これが意外と曲者になることもあります。
+1/+1カウンターを1つ乗せて、それを増殖で増やすことを念頭に置いたデッキなどでは、相手に先んじて-1/-1カウンターを置かれてしまうと、次に+1/+1カウンターを乗せても消滅してしまうため増殖で増やすことができなくなるのですね。
プラスとマイナスが逆になってもしかりです。
- N個を超えてある種のカウンターを持つことはできないという能力を持つパーマネントに、N個を超えてその種のカウンターが置かれていた場合、その種のカウンターをN個だけ残して残りを取り除く。
置けるカウンターの個数に関する処理です。
かなり限定的な処理で、この処理が必要なカードは私の知る限り《Rasputin Dreamweaver》しかいないように思います。
でもこれを必要とするクリーチャーが存在する以上は、必要な処理ですね。
- 英雄譚・パーマネントの上にある伝承カウンターの数がそれの最終章の番号以上であり、かつ誘発してまだスタックを離れていない章能力の発生源でない場合、その英雄譚のコントローラーはそれを生け贄に捧げる。
英雄譚の終了に関する処理です。
英雄譚は、最終章の解決が終わると同時に墓地に置かれます。
書かれていることの以上でも以下でもありませんね。とてもわかりやすいです。
- プレイヤーの探索マーカーがダンジョン・カードの一番下の部屋にあり、そのダンジョン・カードが誘発してスタックから離れていない部屋能力の発生源でないなら、そのダンジョン・カードのオーナーはそれをゲームから取り除く。
ダンジョンの踏破に関する処理です。
最後の部屋まで到達して、その部屋の能力を解決し終わったなら、そのダンジョンを踏破したことになります。
わかりやすいですね。
- 宇宙を刻む者を持つパーマネントと、セクター記号を持たないクリーチャーが戦場にあるなら、それらのクリーチャー1体以上をコントロールしていて宇宙を刻む者を持つパーマネントをコントロールしていない各プレイヤーは、自分がコントロールしているそれらの各クリーチャーにつきそれぞれ、セクター記号1つを選ぶ。その後、それらのクリーチャー1体以上をコントロールしているそれ以外の各プレイヤーは、自分がコントロールしているそれらの各クリーチャーにつきそれぞれ、セクター記号1つを選ぶ。
《スペースベレレン》が持つ宇宙を刻む者という能力に関する処理です。
《スペースベレレン》はジョークパックであるUnfinityのカードですが、ヴィンテージ、レガシー、統率者戦では使用可能なカードであるため、総合ルールにこの記載があります。
- バトルが、守備値が0であり、誘発してスタックを離れていない能力の発生源でないなら、それはオーナーの墓地に置かれる。
バトルの所在に関する処理です。
バトルは通常、守備値が0になったときに追放され、追放領域から変身した状態で唱えられるため、この処理が行われることはありません。
しかしなんらかの理由によってそれが唱えられない状況であったときや、《もみ消し》などによってこの誘発型能力が打ち消されたとき、なんらかの能力によって守備カウンターが乗らないまま戦場に出たときなどに、適正に解決されないままどこかに浮遊してしまうのを防ぐためにこの処理が行われます。
- 守る者として指定されたプレイヤーがゲーム内におらず、そのバトルを攻撃している攻撃クリーチャーもいないなら、そのバトルのコントローラーは、それのバトル・タイプに基づき、適正なプレイヤー1人を守る者として選ぶ。これにより選ぶことができるプレイヤーがいないなら、そのバトルはオーナーの墓地に置かれる。
多人数戦において、バトルの守る者であったプレイヤーが敗北してしまったときに行われる処理です。
守る者であったプレイヤーが敗北してゲームからいなくなったなら、別のプレイヤーを守る者として選ぶことができるということですね。
バトルには現在包囲戦しかないので、1人でも対戦相手が残っているならバトルも引き続き存続できるというわけですね。
- 包囲戦のコントローラーがそれの守る者でもある場合、そのプレイヤーは守る者として対戦相手1人を選ぶ。これにより選ぶことができるプレイヤーがいないなら、そのバトルはオーナーの墓地に置かれる。
包囲戦を守る者に関する処理です。
既に戦場にあるバトルのコントロールが移動した際など、コントローラーと守る者が一致してしまう場合もありますが、その場合は別のプレイヤーを守る者として選びなおせるということですね。
これは対象に取る効果ではないので、プレイヤーが呪禁を持っていても選ぶことができます。
- パーマネント1つに同一のプレイヤーがコントロールしている複数の役割がついている場合、最も新しいタイムスタンプを持つ1つ以外のそれらの役割はオーナーの墓地に置かれる。
役割を持つオーラトークンに関する処理です。
ひとつのパーマネントが複数の役割を持つことはできないということです。
これは破壊なので、エンチャントが破壊されたときの能力が誘発します。
また、複数の役割が同時に生成された場合には、その役割のコントローラーは最もタイムスタンプが新しい役割をひとつ指定する必要があり、それ以外は墓地に置かれます。
以上が、2023年9月1日現在の総合ルールに記載されている状況起因処理の一覧です。(リスト上の太字部分が総合ルールよりの引用)
長いですね……しかしこれを覚えていなくてもマジックはプレイできます。そう、アリーナならね。
◆変身する両面カード◆
マジックのカードの裏面を知っていますか?
茶色の背景に「MAGIC The Gathering™」という昔のロゴが書かれていて、その下には白青黒赤緑の小さい丸、その下にはDECKMASTERと書いてあります。
いったいDECKMASTERってなんのことなんだ?
と思って調べてみたら、マジックはもともとウィザース社が開発したいくつかのカードゲームシリーズのひとつで、DECKMASTERはそれらのシリーズを取りまとめたブランド名なのだそうですね。
いまやDECKMASTERのマジック以外のカードゲームは公式にはサポートされておらず、お目にかかるのは難しいようです。
それはさておき、マジックのカードの中には、この通常の裏面以外を持つカードが存在します。
・変身する両面カード
(第1面)
粗暴な聖戦士 / Brutal Cathar (2)(白)
クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier) 狼男(Werewolf)
このクリーチャーが戦場に出たか粗暴な聖戦士に変身したとき、対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。このクリーチャーが戦場を離れるまで、それを追放する。
日暮(プレイヤーが自分のターンに呪文を唱えなかったなら、次のターンに夜になる。)
2/2
(第2面)
月憤怒の粗暴者 / Moonrage Brute
〔赤〕 クリーチャー — 狼男(Werewolf)
先制攻撃
護法 ― 3点のライフを支払う。
夜明(プレイヤーが自分のターンに2つ以上の呪文を唱えたなら、次のターンに昼になる。)
3/3
まずは第1面として登場し、条件を満たしたり追加コストを支払ったりすると第2面に「変身」する両面カードです。
人間からウェアウルフへの変身、人間からプレインズウォーカーへの覚醒、吸血鬼がコウモリにシェイプシフトするなど、そういった「変身」のフレーバーを表す両面カードです。
他にも、次元に侵攻した結果どうなったかを表したり、未開の地を捜索した結果遺跡を見つけましたということを表したりといろいろ使われているカードのバリエーションです。
「変身させる」とは「このカードを裏返す」という意味で、戦場に存在するまま裏面に切り替わることを表します。
変身したり戻ったりが可能なものとそうでないものがあります。
これらは、これ単体であればそんなに複雑なものではなく、直感的に操作ができるため非常にプレイアブルです。
最初は弱いが、変身して強くなるというのもフレーバー的に割と興奮するものです。
関係ないけど、「日暮」「夜明」って、注釈文に「夜(昼)になったとき、このクリーチャーを変身させる」という内容が書かれていなくて不便ですよね。
「日暮」「夜明」を持つクリーチャーは、昼であるなら第1面、夜であるなら第2面にそれぞれ変身します。
狼男であるのは夜だけ、ということなんですね。
さて……単体であれば、とわざわざ釘を刺したのは、特定の条件では直感的でない動作を行うのがこの両面カードだからです。
特定の条件とはなにか?といいますと、
変身する両面カードであるパーマネントをコピーしたときです。
このコピーですが、それをどうコピーしたかによって変身できるかどうかが決まるのですね。
①「戦場にあるパーマネントのコピーとして戦場に出る」タイプ
(第1面)
ポルクラノスの再誕 / Polukranos Reborn (緑)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー — ハイドラ(Hydra)
到達
(6)(白/Φ):ポルクラノスの再誕を変身させる。起動はソーサリーとしてのみ行う。((白/Φ)は(白)でも2点のライフでも支払うことができる。)
4/5
(第2面)
破滅のエンジン、ポルクラノス / Polukranos, Engine of Ruin
〔緑/白〕 伝説のクリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) ハイドラ(Hydra)
到達、絆魂
破滅のエンジン、ポルクラノスやあなたがコントロールしていてトークンでもこれでもないハイドラ(Hydra)1体が死亡するたび、到達を持つ緑白の3/3のファイレクシアン(Phyrexian)・ハイドラ・クリーチャー・トークン1体と、絆魂を持つ緑白の3/3のファイレクシアン・ハイドラ・クリーチャー・トークン1体を生成する。
6/6
内密の調査員 / Undercover Operative (2)(青)(青)
クリーチャー — 多相の戦士(Shapeshifter) ならず者(Rogue)
あなたは「内密の調査員を、戦場にあるクリーチャー1体のコピーとして戦場に出す。」を選んでもよい。あなたがそのクリーチャーをコントロールしているなら、盾(shield)カウンター1個が置かれた状態で出ることを除いてそうする。(これがダメージを受けるか破壊されるなら、代わりにこれの上から盾カウンター1個を取り除く。)
0/0
《ポルクラノスの再誕》が戦場にいるとき、《内密の調査員》を《ポルクラノスの再誕》のコピーとして戦場に出すとしましょう。
《ポルクラノスの再誕》はご覧の通り、(6)(白/Φ)を支払うことで変身を行うことができるクリーチャーです。
《内密の調査員》はこれのコピーになっている間、この能力を持っていますし、起動することもできます。
が、変身をすることはできません。
理由は
《内密の調査員》はもともと裏面を持たないカードだからです。
そのパーマネントが裏面を持っているかどうかは、コピー可能な値ではないのです。
戦場にあるパーマネントのコピーとして戦場に出るタイプのカードは、もともと変身する両面カードでない限りは変身を行うことはできません。
そのため、《内密の調査員》で変身をしようと試みても裏面がないため変身できず、「実行不可能な指示は無視する」というマジックの黄金律に従い、そのままの状態で戦場にとどまり続けます。
裏向きになって名前と能力がない2/2クリーチャーになることもありません。
コストは支払い損になってしまいます……。
じゃあ、もともと裏面を持っていて変身が可能かカードを用意すればいいんじゃないか?
もともとが変身する両面カードであり、戦場のパーマネントのコピーとして戦場に出ることができるクリーチャーには《鏡の間のミミック》があります。
(第1面)
鏡の間のミミック / Mirrorhall Mimic (3)(青)
クリーチャー — スピリット(Spirit)
あなたは鏡の間のミミックを、これが他のタイプに加えてスピリット(Spirit)であることを除き、戦場にあるクリーチャー1体のコピーとして戦場に出してもよい。
降霊(3)(青)(青)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを変身させた状態で降霊コストで唱えてもよい。)
0/0
(第2面)
恐ろしい模倣 / Ghastly Mimicry
〔青〕 エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
あなたのアップキープの開始時に、それが他のタイプに加えてスピリット(Spirit)であることを除き、エンチャントしているクリーチャーのコピーであるトークン1体を生成する。
恐ろしい模倣がいずこかから墓地に置かれるなら、代わりにこれを追放する。
降霊は「あなたはあなたの墓地にあるこのカードを変身させた状態で降霊コストで唱えてもよい。」という能力であるため、これは変身する両面カードです。
これで《ポルクラノスの再誕》をコピーすれば、ちゃんと変身することができます……が、
変身先は《破滅のエンジン、ポルクラノス》……ではなく実際の裏面である《恐ろしい模倣》……でもなく《ポルクラノスの再誕》になります。
先述の通り、裏面はコピー可能な値ではないことがあり、変身は戦場に存在したまま処理が行われるため、同一のオブジェクトとして戦場に存在している間継続的効果であるコピーが終了することはないので、一度《ポルクラノスの再誕》であることを選んでしまった以上、変身しても《ポルクラノスの再誕》でありつづけることになります。
よくわかりませんね……。またコスト支払い損になってるし……。
ちなみに裏面を持っているクローンクリーチャーにはほかに《玻璃池のミミック》がありますが、そちらはモードを持つ両面カードであり、モードを持つ両面カードは変身できないというルールがあるため、変身を行うことはできません。
が、これはあくまでも「変身ができない」というだけのことであり、既に《破滅のエンジン、ポルクラノス》に変身している状態をコピーすれば第2面もコピーできるというわけです。
②「戦場にあるパーマネントのコピーであるトークンを生成する」タイプ
イルーナの神話 / Mythos of Illuna (2)(青)(青)
ソーサリー
パーマネント1つを対象とし、それのコピーであるトークンを1つ生成する。この呪文を唱えるために(赤)(緑)が支払われていたなら、代わりに「このパーマネントが戦場に出たとき、これがクリーチャーである場合、あなたがコントロールしていないクリーチャー最大1体を対象とする。これはそれと格闘を行う。」を持つことを除きそのパーマネントのコピーであるトークンを1つ生成する。
《イルーナの神話》によって《ポルクラノスの再誕》をコピーしたトークンを生成します。
コピーされたトークンの変身能力を起動すると、
《破滅のエンジン、ポルクラノス》に変身することができます。
なんでだよ!裏面はコピーできないんじゃないのか!?と思いますが、あるオブジェクトのコピーであるトークンは、
そのオブジェクトが持つ特性すべてをコピーするのです。
つまり実際に通常の裏面を持つコピークリーチャーは、裏面を表現できないため変身できないが、作り出すのが自由なトークンであれば、裏面も含めてまるごとコピーできるということなのですね……。
コピートークンは、変身しているかどうかもコピーできるため、既に《破滅のエンジン、ポルクラノス》に変身しているクリーチャーを対象に取れば、最初から第2面のコピーとして生成することもできます。
この場合でも、第1面もコピーされてはいますが、それが参照されることは通常ありませんが、「夜明」「日暮」を持ち第1面と第2面を行き来するウェアウルフでは参照されることがあります。
③「スタック上の呪文をコピーする」タイプ
石成エンジン / Lithoform Engine (4)
伝説のアーティファクト
(2),(T):あなたがコントロールしていて起動型か誘発型である能力1つを対象とする。それをコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
(3),(T):あなたがコントロールしていてインスタントやソーサリーである呪文1つを対象とする。それをコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
(4),(T):あなたがコントロールしているパーマネント呪文1つを対象とする。それをコピーする。(そのコピーはトークンになる。)
《石成エンジン》などの能力によって、スタック上にある呪文がコピーされることがあります。
これによってコピーされたパーマネント呪文は、注釈にもあるとおりトークンとして戦場に出ますので、②と同じように変身することが可能です。
コピーはトークンの方が強いんですね……。
◆カード・タイプ◆
マジックにはいろいろなカードタイプが存在します。
それぞれ行う動作や唱えられるタイミングが決まっているため、慣れてしまえば理解するのに全く問題はないのですが、慣れないうちは混乱しがちです。
カード・タイプには大きく分けて3種類があります。
①土地
土地はコストを支払うためのマナを供給することが主目的のカードタイプです。
こういった「コストとしてしか使えない」というカードは、バランスが悪いとゲームテンポを削ぐおそれがあるため他のカードゲームにはあまり採用されないルールであり、つまりマジックがマジックであるために最も必要なものです。
実際、土地を引けるかどうかで勝負が決まってしまうこともあるため批判されることもありますが、土地システムを使わないゲームが優れているかというとそういうわけでもありません。
土地カードには、マジックの世界におけるいろいろな風景が描かれています。
山にはマグマ由来の熱いエネルギーが眠っているため、赤マナが出ます。平地には人々と平穏が存在するため、白いマナが出ます。
1枚で2色3色と出せる土地もあります。
クリーチャーやプレインズウォーカーたちが生活している世界を垣間見ることができるため、眺めているだけでも楽しいこともありますね。
土地の使い方は簡単。
自分のメインフェイズに一度だけ、自分が優先権を持っていてスタックが空であるとき、コストなしで手札からそのまま戦場に置くことができます。
これだけ。
そのあとはタップすることで、対応するマナを引き出すことができます。
土地は呪文ではありませんので、「唱える」という動作ではなく「プレイする」という動作をする必要があります。
「プレイする」とは、「呪文を唱える」と「土地を出す」をいっしょくたにした言い方です。
「それをプレイしてもよい」というテキストがあった場合、それが呪文であれば唱えられるし、それが土地であれば戦場に出すことができます。
「それを唱えてもよい」と書いてあった場合は、土地を出すことは含まれません。
雷の頂点、ヴァドロック / Vadrok, Apex of Thunder (青)(赤)(白)
伝説のクリーチャー — エレメンタル(Elemental) 恐竜(Dinosaur) 猫(Cat)
変容(1)(白/青)(赤)(赤)(あなたがこの呪文をこれの変容コストで唱えるなら、あなたがオーナーであり人間(Human)でないクリーチャー1体を対象とし、これをそれの上か下に置く。これらは、一番上のクリーチャーにその下にある能力すべてを加えたものに変容する。)
飛行、先制攻撃
このクリーチャーが変容するたび、あなたの墓地からマナ総量が3以下でクリーチャーでないカード1枚を対象とする。あなたはそれをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
3/3
土地はマナ総量が0でありクリーチャーでないカードなので、《雷の頂点、ヴァドロック》の変容誘発能力で対象に取ることができますが、土地は「唱える」という動作をすることができないため、この効果で墓地の土地を戦場に出すことはできません。
土地は呪文ではないと再三申し上げてきましたが、土地以外はすべて呪文であるということをわかりやすくするためです。
②インスタント/ソーサリー
インスタントとソーサリーは呪文であり、使い方はほとんど同じです。
どちらも、唱えて解決されたらそのまま墓地に行く、使いきりの呪文です。
遊戯王でいう魔法カードみたいなことですかね。
違いは、唱えることができるタイミングだけ。
ソーサリーは、自分のターンのメインフェイズ中で自分に優先権があってスタックが空であるときにのみ唱えることができます。
インスタントは、自分に優先権があるときならいつでも唱えられます。
ソーサリーは唱えられるタイミングが少ない分強力な効果、インスタントはいつでも使える分効果が弱かったりコストが重かったりします。
しかしこのインスタントこそが、他のゲームにはめったにない
「相手のターンでも行動できる」という唯一無二のゲーム性をマジックにもたらしているのです。
これに慣れると、相手のターンは相手の行動をただ見てるだけしかできないゲームなんてくそくらえだね!という気持ちになります!
しかしこれがあることによって、ゲームの複雑さが非常に高まってしまうという欠点もあります。
なんせ自分のターンであっても相手も行動できるわけですから、安心して行動することができなくなるというわけです。
この点は割と嫌われがちな要素で、突然飛んでくる除去や打ち消しでやりたいことができずいらだつことがあるんですね。
わけのわからんインスタントで2ターン目にはもう負けが確定してたりするのでね……。
しかしそれらにも必ず対処法があるのがマジックですので、いらだってもめげずに頑張りましょう。
③クリーチャー/エンチャント/アーティファクト/プレインズウォーカー/バトル
これらすべて呪文です。
インスタント/ソーサリーとの違いは、唱えた後はパーマネントとして戦場に出るという点。
パーマネントとは永続するものという意味で、特に破壊するとかいう処理を行わない限りはずっと戦場にあり続けます。
・クリーチャー
その名の通り、マジックの世界に存在する生き物を表したカードです。
クリーチャーには、「相手を攻撃できる」という唯一無二の能力があります。
相手のライフを0にすれば勝利なので、あらゆるカードタイプの中でも最も勝利に直結したタイプであるといえます。
クリーチャーはそれぞれサブタイプを持っています。
これは「人間」や「猫」などその生き物の種類を表したものと「海賊」や「ならず者」など職業を表したものとがあり、大抵両方を持っています。
中には、概念そのものが具現化した「インカーネーション」、民の信仰を受ける存在「神」、マジックオリジナルの生き物である「ヴィダルケン」「ヴィーアシーノ」「レオニン」などへんなやつらもいます。
・エンチャント
魔法の結界や呪い、発生し続けている事件や状況、あるいは発動し続けている魔法、魔法が掛けられている建物などを表したカードタイプです。
エンチャントのサブタイプには「オーラ」「英雄譚」などがあり、いずれも魔法や神話など実体のないものを表します。
専門デッキを組めばまた別ですが、エンチャントはどちらかというと勝利にあまり関係ない能力を持つものが多く、最も使われないカードタイプであるという誹りを受けることもあります。
しかしながら利便性の高いエンチャントはしっかり使われるので、対策を怠ってはいけません。
・アーティファクト
魔法のアイテム、機械、あるいは自立し動くが人ではないものなどを表すカードタイプです。
サブタイプには「機体」「装備品」などがあります。
基本的にはただの物品なので、コストを支払って起動させたり、誰かが搭乗して動かしたり、誰かが装備して戦いに使ったりしないと役に立たないものが多いです。
(アーティファクトの多くは無色でありどんなデッキにでも入れる気になれば入れられてしまうため、あえて極端に強くはデザインしないようにされているようです。)
しかし中にはアーティファクト・クリーチャーとして最初から自立して動けるように設計されたものもありますが、アーティファクト除去とクリーチャー除去の両方に引っかかってしまうので場持ちはさほどよくありません。
「手掛かり」「血」「宝物」「食物」「パワーストーン」「培養器」は定義済みトークンとしていろいろな要因によって生成されます。
・プレインズウォーカー
マジック世界における、世界を股にかける優秀な魔法使いであるプレインズウォーカーその人を表すカードタイプです。
プレインズウォーカーも生きているのでクリーチャーであることは間違いありませんが、クリーチャーの中でも特別な存在なのでカードタイプも分かれているのですね。
プレインズウォーカーは設定上その人ごとに1人ずつしか存在しないため、すべてのカードが伝説のプレインズウォーカーでもあります。
プレインズウォーカーは忠誠度という特有のシステムを有しており、これを増減させていろいろな能力でもって我々に協力してくれます。
多くのプレインズウォーカーは忠誠度をすこし上げる小能力、忠誠度をすこし減らす中能力、忠誠度を大幅に減らす奥義を搭載しており、状況によって能力を使い分けすることができます。
忠誠度は彼らが「我々に協力してくれるやる気」を表しているもので、能力の使用や相手からの攻撃によって0になってしまった瞬間、やる気をなくしてどこかにプレインズウォークしてしまいます。
最初に支払うマナコスト以外はリソース無しでアドバンテージを稼がせてくれる存在であるため、できるだけ長く協力していただけるよう管理しましょう。
以上が現在主に使われているカードタイプです。
これらの他に「部族」や「ダンジョン」なども存在しますが、これらは非常に古かったり限定的だったりして、今後再登場する可能性がかなり低いため割愛いたします。