どどめいろずきんちゃん

私はどどめいろずきんちゃん。
もちろん本名じゃあ、ないわ。あだ名よ。
いつも「どどめいろ」のずきんをかぶっているから、みんなからそう呼ばれているの。
私の金髪に、ずきんの「どどめいろ」はちょっぴり似合わないけど、お母さまが私に作ってくれたずきんだから、いつも肌身離さずかぶり続けてるの。
でも、今日の私はそんなただのずきんお嬢ちゃまじゃないの。
村を取り囲むように茂る森に、一人で住むおばあちゃまへ、ケーキとぶどう酒を届けるの。
私のおばあちゃまはそれはそれは達者な魔法使いなの。
今はちょっとお病気で調子が悪いけど、虫を一発でつぶす魔法とか、冷えたグラタンを温める魔法とか、とにかくたくさん魔法が使えて…

「一人でぶつぶつ言ってないで、早く出発しなさいな。ほら、このバスケット。忘れ物はない?オオカミには気を付けるのよ?」
「もうっ、お母さまったらそんなに構ってくれなくても、どどめいろはもう大人だから大丈夫でしてよ?」
そうよ。だって森の中に一人でおつかいだなんて、すっごく大人っぽいですもの!

ひとりのお散歩はとっても楽しい!興味があるものを好きなだけ観察できるんですもの!
そうだわ、おばあちゃまの魔法薬の材料を採っていってあげましょう!
私が夢中になって植物を採っていると後ろから、うめくようなひくーい声が私のおなかに響く。
振り返ると、絵本で見たのと同じ、黒い耳をしたけもの。

オオカミ!

「森でオオカミに出会ったらどうすればよいか?」
…お母さまから聞いていた方法がありましたわね。大人のどどめはれいせいにね。
えと、確か指をなめてこめかみをくるくるくるっと…じゃあ、ないわ。
あら?なぞなぞを出せばいいんでしたっけ?
考えているうちにオオカミさんは私に迫ってきます!
とすん、と腰を抜かした私は、ああ、バスケットの中身がこぼれちゃう、とおまぬけなことを考えていました。
すると次の瞬間!私の頭上を火の玉が通過し、オオカミさんに命中したのです!

「なかなか来ないから心配して見に来て正解だったわ、どどめちゃん?」

声に振り返るとそこにはおばあちゃまが!
おばあちゃまが火の玉魔法でオオカミを退治してくれたのです!(お病気はもう大丈夫なのかしら?)

「し、心配してくれなくたって。どどめいろはもう大人なんだよ?」
「ふふ、どどめちゃんはいつまでも子供ですよ。さて日も暮れてきたし、今夜はそこに伸びてる獲物で、オオカミ鍋でもしましょうね?」
「わーいっ!おばあちゃま大好きっ!」

おばあちゃまのお料理が食べれるなら、どどめいろ、もうちょっと子供でいてもいいかも…。

公開:2023/5/19 初版:2014/2/10

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