日はすっかり暮れて、校舎の窓には夜の気配が宿っていた。
教室の灯りを消して、僕ところさんは並んで昇降口を出た。
──いつもと同じ帰り道。
でも、なにもかもが、違って見えた。
校門を抜けて、角を曲がって、商店街を通って。
まるでそれは、今までに何度も繰り返してきた帰路のようで──だけど、ひとつだけ、確かに違うことがあった。
僕たちは、手をつないでいた。
もちろん、手をつないだことなんて、これまでに何度もあった。
子どものころなんて、手を離した瞬間ころさんがどっか行っちゃうから、必死で握ってたし。
中学生の頃も、お化け屋敷でお互いビビってつないだこともある。
でも、今日は──まったく違った。
ころさんの手は、あったかくて。
指先が少し汗ばんでいて。
それでも、何も言わずにちゃんと握り返してくれていて。
僕の心臓は、ずっとぽかぽか鳴っていた。
「……ねぇ、おかゆ」
「なぁに?」
「今日の帰り道って、さ……なんか、変な感じだね」
「え、変?」
「いやぁ、その……好きだっていうの、まさか今日言うとは思ってなかったからさぁ!」
「あはは、僕もまさか今日こうなるって思ってもなかったよ」
ころさんは、僕の手をちょっとだけ揺らした。
「ずっと隣にいたのにさ、今は隣にいるっていう実感が、すごいあるっていうか……」
「わかる、それ……」
「なんだろ、これがたぶん、すごくしあわせってことなんだね」
「……うん、僕もそう思う」
沈黙じゃなくて、心地いい無言が流れた。
照れくさくて、でも手を離したくない気持ちだけが、僕たちをつなげていた。
ころさんが、ふっと僕の肩に頭をもたれかける。
「おかゆ〜……」
「なぁに、ころさん」
ころさんが小さく息を吐いたあと──
「えへへ……こぉねと、末長く、よろしくねっ!」
その言葉が、あんまりにもかわいくて。
甘ったるくて、まっすぐで、幸せすぎて──
僕は反射的に、ころさんの手をきゅっと強く握り返していた。
「うん、もちろん。末長く、ず〜っと、よろしくお願いします……ころさん」
ころさんが照れくさそうに笑ったのを見て、僕もつられて笑う。
──僕のとなりは、やっぱりころさんで。
そして、ころさんのとなりも、僕だった。
その当たり前のような幸せが、これからは恋人として続いていくんだと思うと──
もう、それだけで、今日という日が人生でいちばん好きになった。
夜風はすっかり冷たかったけど、手のひらはずっと、ぽかぽかあたたかいままだった。