今日からの帰り道

日はすっかり暮れて、校舎の窓には夜の気配が宿っていた。
教室の灯りを消して、僕ところさんは並んで昇降口を出た。

──いつもと同じ帰り道。
でも、なにもかもが、違って見えた。

校門を抜けて、角を曲がって、商店街を通って。
まるでそれは、今までに何度も繰り返してきた帰路のようで──だけど、ひとつだけ、確かに違うことがあった。

僕たちは、手をつないでいた。
もちろん、手をつないだことなんて、これまでに何度もあった。
子どものころなんて、手を離した瞬間ころさんがどっか行っちゃうから、必死で握ってたし。
中学生の頃も、お化け屋敷でお互いビビってつないだこともある。
でも、今日は──まったく違った。

ころさんの手は、あったかくて。
指先が少し汗ばんでいて。
それでも、何も言わずにちゃんと握り返してくれていて。

僕の心臓は、ずっとぽかぽか鳴っていた。

……ねぇ、おかゆ
なぁに?
今日の帰り道って、さ……なんか、変な感じだね
え、変?
いやぁ、その……好きだっていうの、まさか今日言うとは思ってなかったからさぁ!
あはは、僕もまさか今日こうなるって思ってもなかったよ

ころさんは、僕の手をちょっとだけ揺らした。

ずっと隣にいたのにさ、今は隣にいるっていう実感が、すごいあるっていうか……
わかる、それ……
なんだろ、これがたぶん、すごくしあわせってことなんだね
……うん、僕もそう思う

沈黙じゃなくて、心地いい無言が流れた。
照れくさくて、でも手を離したくない気持ちだけが、僕たちをつなげていた。

ころさんが、ふっと僕の肩に頭をもたれかける。

おかゆ〜……
なぁに、ころさん

ころさんが小さく息を吐いたあと──

えへへ……こぉねと、末長く、よろしくねっ!

その言葉が、あんまりにもかわいくて。
甘ったるくて、まっすぐで、幸せすぎて──
僕は反射的に、ころさんの手をきゅっと強く握り返していた。

うん、もちろん。末長く、ず〜っと、よろしくお願いします……ころさん

ころさんが照れくさそうに笑ったのを見て、僕もつられて笑う。

──僕のとなりは、やっぱりころさんで。
そして、ころさんのとなりも、僕だった。

その当たり前のような幸せが、これからは恋人として続いていくんだと思うと──
もう、それだけで、今日という日が人生でいちばん好きになった。

夜風はすっかり冷たかったけど、手のひらはずっと、ぽかぽかあたたかいままだった。

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