基柱カードの覚え書き
アリーナには死ぬほどたくさんのカードが収録されていますが、それらのうちデッキの中心になりそうなカード(開発部の用語で基柱カードというらしいです)を解説するため開設したページです。
基本的にヒストリックで使うことを念頭に置いて書いていますが、時折違うフォーマットの話もしているかもしれません。
アリーナ以前の環境の話や、紙媒体での展開については知識がありませんので、紙メインの人には合わない話と思います。
文章がやたらアメリカ人(正確には英文の口語邦訳)ぽいのは、私がBraingyeserの和訳記事が好きだったからです。

《集合した中隊》

集合した中隊/ Collected Company (3)(緑)
インスタント

あなたのライブラリーの一番上から6枚のカードを見る。その中から、マナ総量が3以下のクリーチャー・カードを最大2枚まで戦場に出す。残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。

「デッキの上から6枚も見て」!?「3マナ以下なら色も問わず」!?「コストも支払わず2体も戦場に出す」!?
しかもそれが4マナシングルシンボルのインスタントだと!?
夢のあるカードだよな。夢がありすぎて、スタンにいた頃は驚異のシェア率7割を誇ったらしい。
ふつう踏み倒し呪文っていうと「デカいのを安く出す!」とか「デカいのをいっぱい出す!」っていう気概があるもんだけど、このカードにはそれがない。
だからこのカードは主に戦場のアドバンテージを増大させるために使われる。
踏み倒し呪文でありながら、打ち消しよりも全体除去の方に弱いという奇妙な性質を持つ(だってこいつが唱えられるってことは、3マナのクリーチャーなら普通に召喚できるってわけだしね)。
ところでクリーチャー主体のデッキってのはどんどんクリーチャーを召喚するからどんどん手札が減る。
そこに《神の怒り》でも撃たれたら戦場はカラ、そして手札もカラとかいうお手上げ状態に入る。
クリーチャーデッキの負けパターンの一つなんだが、そこがこいつの2つ目の使い道になる。
唱えるだけでクリーチャー(トークンとかじゃなくて"リアル"なやつだ、そのおかげでバウンスにも強いんだ)が2体出てくるので、失ったアドバンテージを即座に回復できるってわけ。
そんなわけでこいつを相手にするとなると、やっぱり全体除去も打ち消しもどっちもか、あるいは全体除去を複数構えておかないといけなくなる。
一方でこいつを使ってる側は、全体除去を警戒して握ったままにしておくか、趨勢をものにするためクリーチャーを呼び出すかのどっちかを見極めないといけない。
普通、踏み倒し呪文の対処法は2つある。「出てきた奴を除去する」か「踏み倒しそのものを打ち消す」かだ。
……普通はな。でもこいつはインスタント。相手の出方を見てから唱えるかどうかを決めることができる。なんて便利なこと!
実はこの手の「クリーチャーをライブラリーから直接戦場に出す」系の呪文は、緑には結構あるんだ。
そいつらの大半はソーサリーだから、下手に唱えるとかなりの隙を晒してしまうのが嫌われて、額面で強力でも極端に使われ過ぎるということはない。
強いけど場面を選ぶってカードは基本的にシェアが上がらない。一生懸命マナブーストして撃っても《否認》一発で吹っ飛ばされたら得がないからだ。
(「唱えたら勝つ」って書いてあるなら上がるけどね。)
その点こいつはインスタントだ。何度も言うぜ、それが一番重要な点だからな。
あー、わかってると思うけど、インスタントタイミングでクリーチャーを出せるってのは死ぬほど便利だぜ!?
 4マナ立たせてターンエンドだ。相手は何をしてくる?おっと《神々の憤怒》ですか、クリーチャーがゼンメツしちまったぞ。残り1マナ、ターンエンドですか?ちょっと失礼、《集合した中隊》を唱えますね……じゃあ俺のターン、ドロー。
てな具合だ。
相手のターンにこれを唱えれば、次の自分のターンには召喚酔いも解けている。
つまりこれは疑似的に速攻付与の呪文でもあるんだ。
シェア率7割ってのもうなづけるな?

ちなみに《集合妖術》っていうソーサリーを唱える版になったカードもあるんだが、そっちはまあ見かけない。
クリーチャーは出しさえすればとりあえず攻撃できるから最低限の役には立つけど、ソーサリーは場面を選んで唱えるものが多いからかな。
そっちはそっちで唱えるだけでストームが3つも稼げたり(こっちはクリーチャーを唱えるわけではないので、ストームは稼げない)、出来事を唱えてハンド面での損失を極力減らしたりと使い道がないわけではないけど、カンパニーほどの汎用性があるわけではない。
向こうはインスタントじゃなくてソーサリーだしね。
《ガラゼス・プリズマリ》

ガラゼス・プリズマリ / Galazeth Prismari (2)(青)(赤)
伝説のクリーチャー — エルダー(Elder) ドラゴン(Dragon)

飛行
ガラゼス・プリズマリが戦場に出たとき、宝物(Treasure)トークン1つを生成する。
あなたがコントロールしているすべてのアーティファクトは「(T):好きな色1色のマナ1点を加える。このマナは、インスタントかソーサリーである呪文を唱えるためにのみ使用できる。」を持つ。
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この方よりも"死ぬほどちょうどいい"カードは存在しない。
何がちょうどいいって、強すぎなくて弱すぎなくて、「何か使い道があるのではないか」と思わせてくれるところだ。
だってすべてのアーティファクトが無くならない宝物、実質インスタントソーサリー用の《モックス・ダイアモンド》になるんだぜ?強そうだよな……イゼットカラーだしさ。
この効果を読んでいるだけで、どんなコンボでもできそうな気がしてくる。インスタントとソーサリーなら撃ち放題に撃てるんじゃないかと思えてくるんだ。
宝物トークンもそうだし、食物トークンとか血トークンとかパワーストーントークンとかさ、ついでのように出てくるアーティファクトトークンがいっぱいあるだろ?
そいつらとこのプリズマリ様を組み合わせればさ、莫大なマナから莫大な手札、莫大なアドバンテージに繋げられそうな気がするんだよ。
でもこの方を活かそうと使い道を模索すれば模索するほど、だいたい上位互換やもっと使いやすいカードがあったり、オーバーキルだったり、そもそもそんな奇特な使い方をするなら最初からこいつがいなくても成り立ってるデッキがあるってことがあったりして、どうやっても最終的なデッキリストからは抜けている……。
(だってヒストリックで死ぬほど自由にやりたいってなら《全知》があるからな。《全知》はエンチャントだから、こいつの能力ではなんの介助にもならない。)
でもそんなわびさびみたいなものを味わわせてくれるから私はこれが大好きなんだ。
これに限らず、ストリクスヘイヴン:魔法学院のレア・カードは全体的に弱いことで有名だ。
なんせ重大な活躍があって禁止になったのが《ゼロ除算》と《表現の反復》(両方ともアンコモン)なんだからな。
そんなふがいない神話レア連中の中、プリズマリ様は随分活躍したほうだ。
3ターン目(プリズマリ大学の呪文には2マナで宝物を作れる能力があったのは覚えてるよな?)にプリズマリ様が飛来して宝物を落としていくことで、相手がめちゃくちゃビビるっていう時期がほんの少しだがあった。
しかし思い返せばそれは《黄金架のドラゴン》が後に控えていたおかげだし、直後のフォーゴトン・レルム探訪がリリースされると、もっと安定性があるドラゴン(《砂漠滅ぼし、イムリス》のことだ)が登場したせいで、プリズマリ様はさっさとストレージボックスに入れられてしまった。
つまりプリズマリ様そのものが脅威と思われていたことはそんなにない……。そこもまた彼の魅力なんだけど……。

俺はどうしてもプリズマリ様を活躍させたくて、いろいろ考えたことがある。
《鍵の秘密》で手掛かりを出しまくったり、《宝箱》で宝物を生産しまくったり、《祝祭の出迎え》で宝物を出しまくったりだ。
でもダメだった。二重に手間がかかって(プリズマリ様を出して維持しながら、アーティファクトも出さなきゃいけないんだ)めんどくさいわりにリターンが少ないんだよ。
だってさ、重い呪文を唱えたいなら普通にマナブーストすれば良くないか?土地は《告別》や《兄弟仲の終焉》で吹っ飛ばされる危険性がないんだからな……。
イゼットカラーにこだわるとしても、墓地に置いた《マグマ・オパス》を《ミジックスの熟達》でぶっ放した方がまともなアドバンテージになる。
でもさ……あったらいいよな。土地とアーティファクトで11マナ出して、《アイレンクラッグの妙技》でジャンプして《弾ける力》で20点バーンっていう……そんなデッキがさ。
《陽気な呪文盗み、アイヴィー》

陽気な呪文盗み、アイヴィー / Ivy, Gleeful Spellthief (緑)(青)
伝説のクリーチャー — フェアリー(Faerie) ならず者(Rogue)

飛行
プレイヤー1人が陽気な呪文盗み、アイヴィーでないクリーチャー1体だけを対象とする呪文を唱えるたび、あなたはその呪文をコピーしてもよい。そのコピーは陽気な呪文盗み、アイヴィーを対象とする。(オーラ(Aura)呪文のコピーはトークンになる。)
2/1

一読して直感的によくわからないので、少しルールがややっこしいカードである。
つまり「クリーチャー1体だけを対象とする呪文を、対象をアイヴィーにした状態でコピーできる」ってことだ……テキストを読んだだけだって?
単一のクリーチャーを対象に取って唱える呪文と言えば、大部分はインスタントかソーサリーで、そして小部分にオーラだ。
インスタントソーサリーのコピーはスタック上に発生し解決されればすぐ消滅するのでわかりやすいが、パーマネントのコピーはトークンとして戦場に出るので、その旨が注釈文として書いてある。
つまりオーラをコピーしたなら、もともとのカードは別のクリーチャーについて、コピーした方はパーマネント・コピー・トークンとしてアイヴィーにつく。
オーラ呪文のコピーは、とあるが、パーマネントならオーラに限らずすべて同じような処理になる。
これだけなら、まあ《巨大化》系のインスタントを2倍にできるってクリーチャーなんだろな(オーラもコピーできるってわざわざ書いてあるって?……バカ言うなよ!)という程度なのだが……。
実は、唱える時に対象を取るパーマネント呪文は、オーラの他にもう1種類ある。
……「変容」だ。
変容を持つクリーチャー呪文は、変容コストで唱えるとき、自分の人間でないクリーチャーを「変容先」として対象に取り、それの上に重ねたり下に置いたりする。
つまり「単一のクリーチャーを対象に取る呪文」なのでこいつの能力で盗めるんだ。
この使い方をしてくれと言わんばかりに、アイヴィーは人間のタイプを持たない。仮に持っていたらこの使い方はまるっきりできないところだった。
どうだい?一気にアイヴィー変容のデッキを組みたい気持ちが湧いてきたろ?

変容を倍にできるってのはデカいぜ!
そもそも変容自体が「1体のクリーチャーに能力をどんどん追加していく」っていう能力だから、変容を重ねれば重ねるほどアドバンテージがもう抱えきれないほどに増えていく。
普通のクリーチャーなら、戦場に出て能力が誘発したら基本はそれっきりだが、変容したクリーチャーなら変容するたびに能力が誘発するんだからな。
(スタン当時は《不思議な卵》や《両生共生体》は見たら速攻で破壊しないともうそれだけで負けるほどだった。あの忌々しいカエルに変容を引いた順で重ねていくだけで莫大なアドバンテージを稼げたんだよ。覚えてるだろ?)
それが倍になるってのはちょっと恐ろしいことだぞ。
青も緑も強力な変容クリーチャーが多いんだ。というか変容クリーチャーはみんな強力なんだ。
《海駆けダコ》《渡る大角》《飛びかかる岸鮫》《水晶壊し》《恵みのスターリックス》……まだあるぞ?

ところで変容の最大の弱点と言えば、単体除去だ。
1体のクリーチャーを強化していく能力なので、《送還》一発撃たれただけで+1/+1カウンターは吹っ飛び、手札は5枚も6枚も増える。すべての努力が無に帰すんだ。……奇しくも、オーラの弱点と同じだな?
そこでこのアイヴィーの色だ。青は打ち消しがある。緑は《タミヨウの保管》系の一時的にパーマネントを守るインスタントが豊富にある。青にも、《とんずら》みたいな一時的にフェイズアウトさせて守るカードが増えてきている。
これらは単一の対象を取る呪文なので、コピー元役とアイヴィーを手札1枚で守ることができるんだ。
普通はこの手の一時的に守る系のインスタントは本当にその場しのぎにしかならず(手札1枚使ってクリーチャーを1体守るだけなので、バンバン除去を飛ばしてくる相手には不利なんだ)肝心な時にしか使えないものなのだが、アイヴィーが居れば事情が変わる。
だってそれにキャントリップがついているなら唱える前より手札が増えるんだぜ。
防御と同時にアドバンテージを取りに行けるんだ……クールすぎるよな。

が、まあ弱点がないわけではない。
アイヴィーの誘発型能力を誘発するには、当然だがアイヴィー以外のコピー元となるクリーチャーが必要になる。
テンポ的にも不安はある。アイヴィーが2マナだから、1マナのクリーチャーとこいつを出しておいて3ターン目からコンボ開始としても、開始から3ターンの間は相手に一切の干渉を行えない上に、相手からの干渉へは無抵抗になるってところだ。
そのうえ、体よくそいつらを出せたとしても、その次にはコピーする変容やらインスタントやらも必要だから、かなり初手に左右される。
コピー元となる相棒に何を据えるかは考えた方がいいかもな。《シルヴァー・レイヴン》とかの1マナ飛行だとか、《アダントの先兵》とかの自前で除去耐性を持ってる奴が適正かもしれない。
最速を狙うと2ターン目までにこいつを引けるかどうかが勝負になるので、黒あたりを混ぜてすこしコントロール寄りに組んだ方がいいかもな。
最速で出しても前述の通り必ずしもコンボが通るわけでもないし。

どうしても2ターン目にこいつを出したいってなら、戦場をヒストリック・ブロールに移行すればいい。
こいつは伝説のクリーチャーだから、統率者に指名できるぞ。
《書庫の鍵》

書庫の鍵 / Key to the Archive (4)
アーティファクト

書庫の鍵はタップ状態で戦場に出る。
書庫の鍵が戦場に出たとき、書庫の鍵の呪文書からカード1枚をドラフトする。その後、カード1枚を捨てる。
(T):望む色の組み合わせのマナ2点を加える。

ヒストリックでのみ使えるアリーナ専用カードの一つだ。これもかなり"ちょうどいい"カードである。
ストリクスヘイヴンの大図書棟に封じられし強力な呪文、書庫の鍵はその封印を無理やり開いて呪文書をかっぱらってくるんだ。
その中にはなんとヒストリックで禁止されている呪文もある。つまり禁止カードを使えるようになるカードってことだ。
こんなに夢のあるカードないぜ?他には《頭目の神官》くらいなもんだ。

書庫の鍵の呪文書には以下のカードが含まれる。(長いので折りたたみ) (カード名の横に★があるものは禁止カード)

 《副陽の接近》
2回唱えたら勝つと書いてある7マナで白のソーサリー。1回目は7点回復し、ライブラリの上から7番目に戻るだけなのだが、その後2回目が解決されると同時にゲームに勝つ。
同じカードである必要はないため、手札に2枚あれば次のターンに勝てる。
書庫の鍵の呪文書の中では最も勝利に直結したカードで、アルケミーにいた頃はこれの効果でしか手札に入れられなかったため優先度が高かったのだが、ヒストリックでは普通に4枚積めるので優先度はその時よりは低くなっている。
明滅などで即座に2枚目を仕入れるのが、アルケミー当時の勝ちパターンだった。
 《審判の日》
ご存じ4マナの全体除去。
これもアルケミー当時はこれの効果でしか手に入らなかったので優先度が高かったが、ヒストリックでは《至高の評決》をはじめ全体除去の選択肢は腐るほどあるのでメインデッキの組み次第ではハズレカードと呼んでもいいものになってしまった。
 《時間のねじれ》
5マナ青のソーサリー。効果は「このターンの次に追加の1ターンを行う」ターン追加のカード。
いうまでもなく強力なのだが、5マナのソーサリーでおまけもないため何も考えず取っていいカードではない。
禁止カードではあるが、その昔《ヴェロマカス・ロアホールド》の効果で山札から撃つのが強かったから禁止になっただけで、普通に撃つには隙が大きいので手札に来てしまうと途端に困った子になったりする。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《日没を遅らせるもの、テフェリー》やらプレインズウォーカーでコントロールしてるときは最優先で取ってもいいと思う。
 《対抗呪文》
青2マナですべての呪文をシャットアウトできる最強の打ち消し呪文。
性能は言わずもがなではあるが、意外と万能ではない。
所詮は1:1交換だし、「打ち消されない」奴には無力だし、既に戦場に出てる脅威には歯が立たないし、起動型誘発型の能力には効かないからな。
とはいってもたった2マナで相手の行動1つをなかったことにできてしまうのは強いので、優先度は最高レベル。
こいつを引く前に出来るだけ盤面を整えておきたい。
書庫の鍵でルーティングして青マナ2つを立てておけば、相手にこいつを警戒させ行動を緩く縛ることができるという玄人志向な使い方もある。
ちょっと見えてる確定カウンターほど恐ろしいものはない……。
 《悪魔の教示者》
この気前のいい悪魔は、たった2マナでどんなカードでもサーチして手札に持ってきてくれるんだ。最強のサーチソーサリーであることに異論が出るはずもない。
なんせ相手に見せるとかライフを払うとかいうデメリットがひとつもないんだぜ。2マナでなんでも持ってくる。
強力すぎてレガシーで禁止ヴィンテージで制限というマジックのルールで考えられるうちで最も重い制限がかけられている。
ヒストリックでも当然禁止なのだが、なに鍵を開けてかっぱらってくりゃいいだけだ。
2マナは書庫の鍵が産出するマナだけでペイできるから、メインデッキの動きを全く阻害しないのが有能である。
こいつ自身が除去にもドローにも打ち消しにも化けるのでこれ以上ないくらいの当たりカード。見かけ次第ドラフトしてもいいくらいだ。
一枚でも入手しておけば、墓地回収したりコピーしたり墓地から唱えたりでバンバンデッキが回せるようになる。万能すぎて恐ろしいな?
呪文書内だけのことで言っても、ライブラリー7番目に潜った《副陽の接近》を即座に手札に持ってくるために使える。アルケミー当時は勝ちパターンのひと(ry
 《破滅の刃》
2マナインスタント。黒でないクリーチャー1体を破壊できる。
地味に見えるが割と有能。《対抗呪文》が間に合わず着陸されてしまった時に役立つ。
黒のクリーチャーには効かないので、相手によっちゃすこし考慮がいるかもね。
 《稲妻》
1マナ3点ダメージのインスタント。赤。
文句なく最高率のダメージ効率なのだが、書庫の鍵が出る頃には3点では消えないクリーチャーも多い。
1マナなのも微妙なところで、メインデッキに赤マナを出せる土地がない場合、この1マナのために書庫の鍵を寝かせなくてはいけないなど、さまざまな点で使いづらい。
 《初子さらい》
1マナで1ターンの間相手の3コスト以下のクリーチャーのコントロールを得る赤のソーサリー。
相手のクリーチャーの頭数を減らしてこちらの攻撃数を増やすことでダメージレースで優位を取ることができ、更には奪ったクリーチャーを《村の儀式》とかで生け贄にして疑似的に除去としても使えるのがこのカードの強み。
なのだが、それらはいずれもアグロ系のデッキで役立つものであり、コントロールがメインの書庫の鍵とは合わない。
なぜなら、相手のクリーチャーを除去したいなら最初から除去呪文を撃てばいいからだ。
これだけのためにわざわざサクり台を用意しておくのは現実的ではない……決まればカッコいいけどな……。
 《クローサの掌握》
3マナでアーティファクトかエンチャントを破壊できる緑のインスタント。刹那という能力も持つため、インスタントタイミングにおけるほとんどの妨害を受け付けないのが特長。
ヒストリックには放置したら負けっていう置物がいくつかあるため、それらを妨害を受けず確実に破壊できるのは大きな強みである。
コントロールデッキなら置物対策は他にも積んであるのが普通だが、サイド前でもある程度の対策になるのは有能。
破壊に対応して起動型能力を起動して……とかいうのも封殺できる。
かゆいところに手が届くいぶし銀なヤツ。
 《新たな芽吹き》
2マナでどんなカードでも墓地回収ができる、2マナのソーサリー。
《悪魔の教示者》ほどではないが、2マナで何にでも化けられるカードであるため、かなり汎用性が高い。
が、よっぽど墓地を肥やすデッキでもないと欲しいカードが手に入らない苦痛はある。
主に《書庫の鍵》が破壊された時用に握っておきたいのだが、メインデッキに緑を出せる土地がないと唱えることがままならないという弱点もある……。
 《灯の儘滅》
白黒2マナで、マナ総量4以上のパーマネントを追放できるインスタント。
軽いクリーチャーには対応できないが、たった2マナであらゆる大物に対処でき、追放なので死亡誘発も破壊不能も再利用も許さない。
総じて優秀なヤツ。ただウィニーには無力。
 《電解》
3マナで2点の割り振りと1ドローを行うインスタント。青赤。
除去としては心もとなく、ドローソースでもないので優先度は低い。これに限らず書庫の鍵から出る火力呪文は心もとない。
《プリズマリの命令》とかでいい感がある。
 《成長のらせん》
青緑の2マナインスタント。1ドローして土地を追加で1枚セットできる。
非常に強力なカードなのだが、これはやはり最序盤に唱えるのが強いカードであり、4,5ターン目に撃ってもさほどうま味がないことが多い。
出せる土地がもう手札にないって場合もあるしね。
 《稲妻のらせん》
赤白の2マナで3点ダメージと3点回復が合わさった優秀な奴。
とりあえず回復ができるので、《稲妻》よりは使いやすい。
何故書庫の鍵から出る火力呪文が心もとないかというと、火力呪文はそもそも序盤に相手の展開を阻害するために撃つものだからだ。
中盤に1枚手に入ってもさほど大きな影響がないから使いづらいのだ。
 《化膿》
黒緑3マナの除去呪文。クリーチャーとアーティファクトを対象に取れる。
場所は選ぶがまあまあ便利。アーティファクトも対象にできるのが腐りにくい。化膿だけど。


まず「呪文書からのドラフト」とは何かを説明したい。簡単に言うと、ランダムにくじ引き的にカードを引けるという仕組みだ。
15枚の候補のうちから3枚を無作為に選び提示され、プレイヤーはその中から1枚を選んで手札に加えたり戦場に出したり墓地においたりする。
選んだカードは指定の領域に直接生成されるため、そのカードをデッキに入れている必要も所持している必要もない。
15C3=455通りあるうち、特定のカード1枚が引ける確率は1-14C3/15C3=0.2で20%くらいしかないため、「このカードが絶対欲しい!」という使い方だと狙いを定めづらく嫌われやすい……くはあるのだが、くじ引きやランダムに幸運が訪れるというフレーバー的には100点満点だし、言い換えれば強いカードが簡単には手に入らないために試合が大味になりにくいグッドシステムなのである。

ところでこいつはこのドラフトを戦場に出たとき1回しか行えない。その後は好きな2マナを出す置き物になってしまう。
……戦場に出たとき1回だけしかできないのか。まあ何度も何度も発動して禁止カードバンバン使われたら困るしな。

……もうお分かりかい?出た時1回なら、何度も出し直せばいいだけのことじゃないか!
こんなカードがある。

テレポーテーション・サークル / Teleportation Circle (3)(白)
エンチャント

あなたの終了ステップの開始時に、アーティファクトやクリーチャーのうちあなたがコントロールしている最大1つを対象とする。あなたはそれを追放し、その後そのカードをオーナーのコントロール下で戦場に戻す。

見ての通り、出し直しを行うエンチャントだ。
これを使って書庫の鍵を何度も何度も出し直せば、状況に関わらず勝利できたり、全体除去を撃ちまくれたり確定カウンター飛ばしまくったり延々ターンをやりなおせたりするってわけだ。
アルケミーの狭いカードプールで《副陽の接近》でエクストラウィンぶっ放すのは愉悦だったぜ!
これはアルケミーでも成立するコンボだった。ヒストリックに来てからはすこし難しいがな。
4マナの置き物2つというそれなりに重量級の準備が必要で、これらは両方とも《告別》で吹っ飛んでしまうため、そこまで実用的ではない。

唯一、この鍵をひねって怪盗になる前に準備しておかないといけないことがある。
手札だ。この鍵からはドラフトした後、手札を1枚捨てなきゃいけないんだ。
手札が0枚の状態でドラフトしたなら、その持ってきた呪文をそのまま墓地に置かなきゃいけない。
そしてそれとちょうどかみ合わないのが、この鍵の呪文書にはドローソースがないってことだ。
キャントリップとサーチならあるが、これでは手札の枚数を増やすことはかなわない。
何百回明滅させても手札を増やすことができず、そして手札がないとせっかくの禁じられた呪文もするりと手から抜けていってしまうのがこの鍵の弱点といえる。
……まぁリスクがないと泥棒も面白くないからな。それに盗みに入るなら事前準備が一番大事だってルパン三世も言ってたし。

(蛇足で申し訳ないが、副陽コントロールにもこのカードはあった方がいい。《才能の試験》や《石の脳》を使われると勝ち筋がなくなってしまうからだ。この鍵は《副陽の接近》をゲーム外から手札に直接生成できるから、デッキ内の副陽をすべて追放されても、後から用意しなおすことができる。このカードが持つ唯一無二の特長だ。《願いのフェイ》でサイドから持ってくればいい?黙ってろ!)

《全知》

全知 / Omniscience (7)(青)(青)(青)
エンチャント

あなたは、あなたの手札から呪文を、それらのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。

"全"てを"知"る……か。全知であることは全能を含有するのだな。
見ての通り、手札すべてを踏み倒せるエンチャントだ。一人だけ遊戯王の世界にプレインズウォークだ。ここまで強烈にルールを破るカードは、まあそうはないはずだぜ。
最高だ!マナコストを支払わなくていいだって!
今まで2マナ立てて打ち消しを握ったままターンを回した方がいいか、それともその2マナでクリーチャーを置いてからターンを回すべきか、死ぬほど悩んでたのがアホみたいだ。
何だってできるぜ。文字通り何だってできる。どんな複雑で重いコンボもこれがあれば速攻で成立する。
つまり、このカードを戦場に置いた瞬間勝ちが確定するって意味だ。
ん?出したら勝ちますじゃ面白くないって真上に書いてあるって?そりゃ簡単に出せればの話だ。
見てみろ、こいつはその強烈な効果に恥じない凄まじいマナコストを持っている。
エンチャントでしかも10マナともなれば、ブーストして到達するにしたってそこそこな重労働だ。
そんで10マナ溜めて唱えたら《ドビンの拒否権》……?狂っちまうよな。

……まあ、言わなくてもわかるだろうが、重すぎて出せないってなら、そう、踏み倒せばいい。金を払わなくていいってのは最高だ。
こいつを踏み倒す方法自体はたくさんある。墓地に落としてから釣り上げるのが一番簡単かな。
だが少し考えてみてくれ、こいつは出たら勝つエンチャントではあるが、よく見るとこいつ自身は別に何もしないことがわかるだろ。
極端な話だが、こいつを出すのに一生懸命で、戦場に出すことには成功したがそのために手札がなくなってしまったってなら、こいつは特に何もしないエンチャントになる。
フルパワーで突っ走るには手札が必要なんだ……。手札を補充しつつこいつを戦場における、そんな呪文があれば便利なんだがな……。

涙の氾濫 / Flood of Tears (4)(青)(青)
ソーサリー

土地でないパーマネントをすべてオーナーの手札に戻す。これによりあなたが、あなたがコントロールしていてトークンでないパーマネントを4つ以上戻したなら、あなたはあなたの手札からパーマネント・カード1枚を戦場に出してもよい。。

そうそうそう!こういうのを待ってたんだ!これで《全知》を置くとなれば、それと同時に4枚の手札が確約される。
必要なものはなんだ?土地でもトークンでもないパーマネントが4つと、手札に《涙の氾濫》そして《全知》と、あとは6マナ払えれば……それでゲームエンドだ。
4つったってコントロールデッキにはいろいろ置いておくものがあるぜ。《真夜中の時計》やら《ウィザード・クラス》やら《願いのフェイ》やらをばら撒いておけばいい。
雑魚クリーチャーが手札に戻ってきてもしょうがないじゃないかと思うかもしれないが、詳しくは割愛するが《願いのフェイ》はクリーチャーでありながら、サイドからカードを1枚持ってくるというソーサリーとしても使える1人2役のカードなんだ。
驚くだろ!信じられんほどの相性だ!パーマネントの頭数に入れながら、確定サーチみたいなことまでできるんだぜ!
さあ、涙が大氾濫して戻ってきた《願いのフェイ》がサイドから持ってくるのは《大いなる歪み、コジレック》か?《苦悶の触手》か?《深淵への覗き込み》か?
どれでも結果は同じさ。

さて、こいつの弱点についていくつか書いてきたが、もっと他にもある。
マナコストにXがある呪文はX=0になってしまうってとこと、手札以外から唱える呪文に関しては踏み倒せないってとこ、それと手札の呪文以外(たとえば起動型能力とか)にはマナを払わなくちゃいけないってとこだ。
……書いていくといっぱいあるように見えるが、わざわざ使おうと思わなければさほど気にしなくてもいい。
だけど、ここぞというところで使えなかったりすると心持ちがわるいからな。特に代替コスト関連は混乱しやすいからチェックしておくといい。
詳しくはここに書いてある。
例えばキッカーと切除は挙動が似ているとよく言われるけど、《全知》の影響下ではキッカーの方が有利になる。
《全知》は「マナコストを支払うことなく唱えてもよい」という代替コストを与える能力なので、キッカーはもともとの呪文のコストが0になり追加で払うのはキッカーコストだけになるが、切除の場合は切除自体がそもそも代替コストなので《全知》では踏み倒せず、満額払うしかなくなるのだ。

……ま、いずれにせよこいつが戦場に出た瞬間にほぼ勝ちなのは織り込み済みだ。俺らにできるのはその勝ちをできるだけ100%に近づけることだけさ。
《地獄界の夢》

地獄界の夢 / Underworld Dreams (黒)(黒)(黒)
エンチャント

対戦相手がカードを1枚引くたび、地獄界の夢はそのプレイヤーに1点のダメージを与える。


かつて、マジックの世界には夢があった。
それは、見ただけで毎夜あなたを徐々に苛み蝕むおぞましい悪夢だった。
しかし夢の多くが、それから目覚めてしまえばあとは思い出すこともできないものであるように、この悪夢もそう長くは続かなかった。

黙示録、シェオルドレッド / Sheoldred, the Apocalypse (2)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) 法務官(Praetor)

接死
あなたがカード1枚を引くたび、あなたは2点のライフを得る。
対戦相手1人がカード1枚を引くたび、そのプレイヤーは2点のライフを失う。
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このカードの活躍は、今や語るべくもない。
スタンダードはもちろん、パイオニア、モダン、果てはレガシーですら採用実績があり、シングル価格もうなぎのぼりで手のつけようもないほどだ。
アリーナ・ラダーにのぼれば、この黙示録に出くわさない日はない。

――夢は、とって代わられた。
機械兵団の恐ろしい黙示録によって――。


しかして躍進を続けるこの黙示録だが、一方でもろさがあった。
彼女は生きているのだ――すなわち、"殺す"ことができる。
《喉首狙い》を受けたクリーチャーが向かうのは、いったいどこだろう?

「死の国――The Underworld――へようこそ」


この夢は、ドロー、すなわち新たなる知識、探求、旧友、平等、衝動、それらに反応して相手を苛む。
相手にそれらをもたらせば、それだけ傷口は疼き苦痛を発する。
些末な痛みだが、それはやがて立ち返れない惨苦となっていく。

ルーンの苦役者 / Runed Servitor (2)
アーティファクト クリーチャー — 構築物(Construct)

ルーンの苦役者が死亡したとき、各プレイヤーはカードを1枚引く。
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空想の書物 / Folio of Fancies (1)(青)
アーティファクト

各プレイヤーの手札の上限はなくなる。
(X)(X),(T):各プレイヤーはそれぞれカードをX枚引く。
(2)(青),(T):各対戦相手はそれぞれ、自分の手札にあるカードの枚数に等しい枚数のカードを切削する。


第三の道のロラン / Loran of the Third Path (2)(白)
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 工匠(Artificer)

警戒
第三の道のロランが戦場に出たとき、アーティファクトやエンチャントのうち最大1つを対象とする。それを破壊する。
(T):対戦相手1人を対象とする。あなたとそのプレイヤーはそれぞれカード1枚を引く。
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フランフ / Flumph (1)(白)
クリーチャー — クラゲ(Jellyfish)

防衛、飛行
フランフがダメージを受けるたび、対戦相手1人を対象とする。あなたとそのプレイヤーはそれぞれカード1枚を引く。
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相手への利を与える行為、なんたる狂気であることだろう。
さりとて、悪夢を操ろうと夢想するものが正気であるはずも、くわえてその必要もない。
むしろ、半端に正気であろうとするよりも、五感悉皆狂気に飲まれてしまった方が安心だ。少なくともその本人にとっては。

深淵への覗き込み / Peer into the Abyss (4)(黒)(黒)(黒)
ソーサリー

プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分のライブラリーにあるカードの枚数半分に等しい枚数のカードを引き、自分のライフの半分を失う。それぞれの端数は切り上げる。


再帰性の五感、つまり目は顔であり、口は顔であり、顔である以上そこには目と口があるが、それらも顔である。
ドローをして、その分ライフを払う。
黒のマジックでは至極当たり前の動作だ。しかしそれをなぜ相手を対象に行えるようになっているんだ?
当たり前の動作でなぜ人が死ぬ?
極大極小の世界まで続く狂気を発した者、そしてそれを覗き込んだ者。
《地獄界の夢》――《Underworld Dreams》は、その後者を連れて行ってしまうのだ。
それが「覗き込まされた」者であったとしても。

“In the drowsy dark cave of the mind dreams build their nest with fragments dropped from day’s caravan.”

―― Rabindranath Tagore


そして我々は、往々にしてそのことに気が付かない。

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